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    郵政20条訴訟、東日本で勝利/東京地裁/手当などの格差是正命じる


     日本郵便の契約社員3人が正社員との労働条件格差の是正を求めた裁判で、東京地裁は9月14日、年末年始勤務手当などの格差を不合理とする判決を下し、会社側に約92万円の損害賠償を命じた。

     労働契約法20条違反を訴えた裁判では、請求棄却が続いており、原告が所属する郵政産業労働者ユニオン(以下、ユニオン)は「画期的判決」と評価している。

     

    ●格差は「不合理」

     

     原告3人は、それぞれ東京、千葉、名古屋の郵便局に勤務。2003~08年に就職して以来、6カ月契約を繰り返し更新して働いてきた。仕事内容は正社員と同じだが、年末年始勤務手当など六つの手当がなく、病気休暇も無給だ(表)。賞与には年間約100万円の格差がある。こうした格差を労契法20条違反として14年、会社を相手に提訴した。

     判決は、年末年始勤務手当について請求額の8割、住居手当では6割を支払うよう会社に命じた。病気休暇を有給としない点も「不合理」と断じた。

     原告の浅川喜義さんは「判決を聞いて涙が出た」とコメント。一方、賞与額などの格差の是正が認められなかった点に悔しさをにじませ、「不当判決を受けてきた他の20条裁判の仲間とともに、さらに非正規のための運動を盛り上げ、控訴審では貪欲に勝っていきたい」と決意を述べた。

     

    ●正社員組合員の証言響く

     

     20条裁判では、契約社員の仕事内容と責任をどの正社員と比較するかが大きなポイントとなる。今回のケースでは、同じユニオンに加盟する正社員が法廷の証言台に立ち、業務の同質性をアピールした。

     会社側は「管理職も含めた正社員全体と比較すれば、業務内容は大きく異なる」と抗弁したものの、裁判所は原告側の主張を採用。正社員全員ではなく、現場で原告と同じ仕事をする一般職正社員を比較対象とした。原告側弁護団の小川英郎弁護士はこの点を「新しい判断で、今後の裁判原告を勇気づけるものだ」と高く評価している。