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    労働時評/春闘、働き方改革が焦点/今年の産別大会の特徴

     各産別の大会がおおむね終了した。新たな運動方針の主要課題は、来春闘構想や働き方改革。解散・総選挙を含め9条改憲阻止も重要課題となっている。

     

    ●進むか、春闘構造転換

     

     来春闘構想で連合の各産別は5年目への「ベア春闘継続」と併せて、「春闘の構造転換」を掲げているのが注目される。

     「春闘の構造転換」には三つの意味がある。第一は物価など経済指標が低くても賃上げ先行で経済の自律的成長をめざす社会的役割春闘への転換。第二は「大手追随・準拠からの構造転換」で、中小春闘の強化だ。第三は春闘相場の目安となるトヨタの回答など金属産別を上回る内需産別・単組の運動の前進である。

     連合の17春闘の結果は33年ぶりに中小のベア率が大手を上回る成果をあげた。しかも5月までは、春闘62年で初めてベア額でも大手を上回り、「顕著な成果」と評価している。

     各産別でも人手不足の打開へ賃金水準の引き上げと併せ、中小支援体制を強め、結果を出した。

     JAMでは初めて地場先行相場の形成へ319組合の地方リーディング労組を設定し、ベア獲得組合を増やした。化学関係のJEC連合でも中小が大手のベアを約550円上回った。初めて産別本部が中小の交渉に参加した効果だという。自動車総連もトヨタ系のデンソー、アイシン精機などが1500円と、前例のない「トヨタ回答(1300円)超え」も見られた。

     中小の奮闘の背景には巨額の内部留保を蓄える大手の回答が低すぎることがあり、大企業労使の社会的責任も問われている。

     

    ●金属だけが主役なのか

     

     春闘相場の目安とされている金属大手回答を上回る、内需産別・単組の成果も生まれている。

     UAゼンセンは初めて製造など138組合で部門闘争委員会を新設し、化繊などで自動車、電機の回答を上回った。「春闘は大手金属だけではない」と金属の回答日に初の記者会見を行い、変化をみせた。

     情報労連はNTTが2年連続でトヨタを超え、フード連合は味の素のベア1万円を筆頭に昨年を上回る回答が増加。前年マイナスの金属大手とは異なることを見せつけた。各産別でも変化が見え始めている。

     春闘改革では内部留保を含む付加価値の還元や公正取引の運動も特徴だ。「企業は高収益で、人手不足だが賃上げは鈍い」といわれる分配の歪み是正は18春闘でも重要課題となる。

     

    ●働き方改革にらみ交渉

     

     働き方改革については、労働法改定をにらみながらの労使交渉が展開されている。

     労働時間の短縮では、1日8時間を踏まえつつ、時間外労働の上限規制で多くの産別が「抑制的な36協定(原則月45時間、年間360時間)の締結」を重視。電機連合、UAゼンセンなどは勤務間インターバル規制(休息時間保障)導入組合の増加をめざしている。

     自治労連は「なくそう長時間残業 いっせい職場訪問」を通じて残業削減と要員増を当局に要求。「組合はありがたい」と期待の声が単組に寄せられているという報告が、大会で相次いだ。

     非正規労働者の処遇改善では、各産別とも有期雇用労働者の無期転換や正規を上回る賃上げと組織化を強めているのが特徴だ。

     

    ●労働法制の変質阻止を

     

     労働法制をめぐる闘争では、総選挙後の国会に提出される働き方改革関連法案が争点となる。8法案の一括提案となるが、最大の問題は労働法制の変質・解体である。

     労基法では、労働時間規制を除外する「残業代ゼロ制度」(高度プロフェッショナル制度)を導入。年収と業務を要件としているが、最悪のケースでは、休憩なしに1日24時間、連続48日間(前後に休日4日)労働させても、残業、深夜、休日の割増手当が支払われない。労働時間規制の破壊であり、労基法施行70年で最大の改悪だ。

     残業上限規制では過労死ラインの100時間未満を容認。同一労働同一賃金も人材活用の違いで格差を固定化。加えて雇用対策法を労働施策総合推進法に名称を変え、「労働生産性の向上」や、「多様な就業形態の普及」で個人請負を増加させ、労働法制の変質と解体を狙っている。

     組合の存在意義が問われる歴史的な闘争。労働時間規制の破壊に反対し、連合、全労連、全労協、弁護団や4野党、市民を含む大闘争の構築が課題だ。全労連のJMITU、全印総連などが産別スト権を確立して闘うとしている。

     

    ●統一戦線的闘争を

     

     憲法も施行70年で最大の危機に直面している。

     改憲に執念を燃やす安倍首相は「戦争する国」へ自衛隊の9条3項新設を狙っている。戦争法で集団的自衛権の行使が容認された自衛隊が憲法に明記されると、米軍などと海外で無制限に武力行使できることになる。戦争放棄、戦力不保持の憲法は破壊される。

     連合も検討を始め、UAゼンセンの松浦昭彦会長は安倍9条改憲について「国民的議論で方向付けを」と表明。一方、自治労は9条改憲阻止を大会で決めた。

     全労連は9条改憲発議など重要段階にはストの実施を確認。医労連やJMITUは大会で改憲反対スト権を確立している。

     労組も参加する総がかり行動実行委員会や九条の会など、26以上の組織が「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション」を結成し3千万署名を展開する。平和は労働運動の礎だ。9条改憲阻止へ安倍政権退陣を含む統一戦線的な闘争が求められている。(ジャーナリスト 鹿田勝一)