「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    2016年

    10月

    01日

    厚労省リーフ配布で雇い止め?/愛知県労委/河合塾の不当労働行為を断罪

     敷地内でリーフレットを配ったことなどを理由とする雇い止めは不当労働行為だとして、愛知県労働委員会が大手予備校「河合塾」(名古屋市)に対し、元委託契約講師で「河合塾ユニオン」書記長の佐々木信吾さん(54)を復職させるよう命令していたことが9月23日わかった。命令は8月30日付け。雇い止め以降の賃金補償も命じた。

     

    ●労働者性も認定

     

     佐々木さんは1990年から20年以上講師を務めてきた。13年8月、東京都町田市と神奈川県横浜市にある2校舎で、改正労働契約法の無期転換ルールを説明した厚生労働省のリーフレット(写真)を有期雇用で働く職員ら数人に手渡した。塾側は、無許可の配布で施設管理権を侵害されたとして問題視。別の不適切行為もあったとして雇い止めした。

     愛労委は、配布行為について「場所、状況等に一定の配慮をし、手渡しは穏当に行われ」たと認定。その上で「法人がこれ(契約)を更新しなかった理由には合理性がなく」、不当労働行為に当たるとした。

     塾側は佐々木さんの契約が雇用契約でなく業務委託契約だったことなどにより「労働者性はない」と主張したが、愛労委は「法人の指揮監督の下に労務の提供を行っていた」実態などから、労働組合法で保護すべき労働者だと認定した。弁護団によれば、学習塾の業務委託講師の労働者性を認めたのは全国で初めて。

     

    ●無期転換前にクビ切り?

     

     事件の経過から浮かび上がるのは、厚労省のリーフレットを配布したことに対する塾側の過剰な反応だ。命令書でも「単に改正法の解説が記載されたものにすぎず…組合の宣伝や法人への批判的記事等もない」と疑問を呈している。

     背景にあるのは、勤続5年以上の有期契約労働者を無期雇用化する「無期転換ルール」だ。

     ユニオンによれば、河合塾では13年度以降ベテラン職員を含め大幅な雇い止めが行われており、相談が相次いでいた。佐々木さんは「塾側は非正規の職員を無期転換させず、有期雇用のままにしておきたい意向がある」という。そうしたなか、無期転換の権利を保障する制度を職場で伝えようとして起きたのが、今回の雇い止めだった。

     ユニオンの竹中達二委員長は「無期転換させないためのクビ切りを続けていては生徒指導のノウハウは育たない。現場の職員はがんばっているが、引き継ぎ不足など職場の混乱のなかで塾の評判が落ちている実態もある」と指摘している。

     このほか、佐々木さんの雇い止めとは別に九州の組合員への雇い止めや他団体との差別的取り扱いなどの救済を求めた請求については却下された。河合塾ユニオン(東京公務公共一般労働組合・大学専門学校非常勤講師分会・河合塾分会)は「再審査申し立てや団体交渉などあらゆる手段を検討し引き続き解決を求めていく」としている。

     

    〈用語解説〉無期転換ルール

     

     有期契約で勤続5年を超えると見込まれる労働者が無期契約への転換を申し出た場合、使用者が承諾したとみなされる制度。改正労働契約法の施行から勤続年数が通算されるため、施行5年後の18年4月以降に無期契約転換の対象者が出ます。