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    市民と連帯し安倍改憲にNO!/安保法制反対の学者らがシンポ

     安全保障関連法に反対する学者の会が10月8日、都内の明治大学で憲法問題についてのシンポジウムを開いた。安保法制と憲法改正の是非は間近に迫った総選挙の争点であり、300人以上の市民が集まった。

     基調報告で水島朝穂早稲田大学教授は、9条改正案について「加憲ではなく、死文化を狙った非常に巧妙なテクニック。自衛隊合憲化と集団的自衛権は表裏一体」と指摘。「集団的自衛権で立憲主義をゆがめた安倍政権には憲法改正をする資格はない」と批判した。

     自衛隊違憲論者へのバッシングにも触れ「好き嫌いや政治的主張ではなく、学問的かつ知的誠実さに基づいて自衛隊を違憲と判断している。知的空間が荒れてきている。憲法学者は(危険をいち早く知らせる)炭鉱のカナリアだ」と述べ、学者の会の存在意義を強調した。

     大沢真理東京大学教授は「安倍政権は社会保障の機能強化が極端に希薄だ」と発言。国内総生産(GDP)や貧困率が改善したという報道は、政府統計の算出基準改定による欺瞞(ぎまん)だと断じた。

     9条同様に改正が懸念される24条(家族生活における個人の尊厳・両性の平等)について、三成美保・奈良女子大学教授がジェンダー法学の観点から解説した。自民党改憲草案は家族保護をうたう一方で、家族内での自助努力を重視し、家族を公の秩序に服させると分析。24条は男女平等の基本的な条文であり、個人の尊厳や多様な選択肢が途絶えてしまうと訴えた。

     

    ●有志の会を活性化

     

     憲法シンポと併せ、全国に約150ある大学有志の会を地域ブロックごとに組織したことを記念する集会も開かれた。個々に活動していた有志の会に地域内の交流を促し、学者の会の活動を強化する考えだ。

     各地域ブロックの代表者が、これまでの取り組みを報告。集会や学習会のほか、防衛省研究費の情報開示要請、地元紙を通じた広報活動、OBとの連携、学生向け投票キャンペーンなど、大学の特性を生かした事例も紹介された。

     行動提起で佐藤学・学習院大学教授は「知識人と市民が連帯する中でしか未来は開けない」と運動の前進を呼び掛けた。

     学者の会はほぼ4カ月ごとに集会を開いており、次回はアジアの平和をテーマに大規模なシンポジウムを行う予定だ。