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    ギャンブル依存症問題を考える(上)/「家族の会」の全国組織設立

     「ギャンブルにつぎ込むお金のために、実家から現金や物を盗み、最後にはおやじが飼っていたニシキゴイを売って金に換えようとした。職を失い、友人も失った」――。全国ギャンブル依存症家族の会の設立記念フォーラムが10月26日、都内で開かれ、当事者やその家族が体験を報告した。

     

    ●死の淵まで追い込まれて

     

     今年9月の厚労省調査では、ギャンブル依存症の疑いがある人は全国に320万人。人口比でみた場合、諸外国より目立って多いことが分かっている。

     設立フォーラムで体験を語った大阪の男性もギャンブル依存に苦しんだ一人だ。高校時代にパチンコ、大学で裏カジノにはまり、就職後に野球賭博にのめり込んだ。親の金を盗み、周囲からは借金。実家の金目になりそうな物を売り払った。

     男性はその後、自助グループによる回復プログラムに参加。現在までの2年半、ギャンブルから抜け出せているという。「あの頃の自分は正常じゃなかった。母親には『あなたを殺して、自分も死ぬ』と脅された。たぶん本気だったと思う。回復プログラムに関わらなければ、死んでいたかもしれない」

    ●「家族の会」が支えに

     

     ギャンブル依存の子どもや夫を抱える家族の体験も壮絶だ。長男がギャンブル依存症だった男性は「長男がサラ金から数百万円を借りてギャンブルに。全額親が返済したが、1年もしないうちに同じことを繰り返した。カウンセラーに連れて行っても聞く耳を持たなかった」と語った。

     長男はその後、回復のための施設に入所。現在は立ち直ったが、男性は「施設入所者の家族会が私たちの救いだった」と振り返る。「家族会の中で経験を分かち合うことで、気持ちがどれだけ楽になったか。家族の会がなければ、私たちはつぶれていたと思う。家族会なしに、ギャンブル依存症からの回復はあり得ない」と訴える。

     今回設立された全国ギャンブル依存症家族の会は、これまで8都県に作られてきた家族の会の連携組織。ギャンブル依存症の悩み相談や解決策のサポートに取り組むとともに、依存症問題の啓発活動にも力を入れていく。