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    老後に備える――医療・健康保険編(7)/差額ベッドで損をしない知恵

     都内で暮らす80代女性が夜間に腹痛を訴え、救急車で運び込まれた先が医科大学の附属病院。「入院して検査を」となったが、入院同意書に記された差額ベッド代に家族は思わずのけぞった。1日6万5千円! 他に空き部屋はないという。午前0時を回っていて、他の病院を探すあてもなく、渋々同意書にサインをしたのだが…。

     差額ベッド代は健康保険外で高額療養費の対象にならず全額自己負担。厚生労働省の調査では全国平均で1日当たり6155円だが、都内では1日数万~二十数万円のベッドもある。

     しかし、病院が患者に差額ベッド代を請求できるのは、患者の希望でその病室を利用した場合のみ。(1)書面による患者同意がない(2)治療上の必要性から差額ベッドの病室を利用した(3)病院側の都合で差額ベッドを利用した――場合には、差額ベッド代を請求してはならないと厚労省が通知を出している。

     冒頭の女性のケースのように、他の病院の選択肢がなく、時間的にも切羽詰まっている場合、渋々「同意書」にサインしてしまう人は少なくない。だが諦めるのは早い。「他のベッドの空きがない」のは病院側の都合ともいえるからだ。

     厚労省通知には「救急患者のための病床は差額ベッドの病床から除外すること」も明記されている。この女性の家族は支払いの際、厚労省通知を基に交渉。差額ベッド代を3分の1に減額することに成功した。70、80代の入院受診率は50代前半の数倍。いざというときに備えた知識が必須となっている。