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    「賃上げを社会の隅々へ」/連合春闘討論集会/働き方や商習慣見直しも議論

     連合は2018春季闘争で「2%程度を基準」とする賃上げ方針を検討している。11月1、2日に都内で開いた討論集会では基本構想を論議し、働き方や取引慣行の見直し、底上げ、格差是正の取り組みについて意見が交わされた。

     神津里季生会長は、物価上昇がほとんどない下でベースアップを実現し、賃上げ率では、中小が大手を、非正規が正規を上回る傾向がみられた「17闘争」の成果に言及。「これを社会に広げていかなければならない。賃上げの流れを強化し、賃金は上がるものだという常識を取り戻そう」と呼び掛けた。そのためにも、下請け企業が適正に利益を確保できるようにするための社会運動に、行政や経営者団体と連携しながら取り組むようあらためて提起した。

     基本構想は「働き方の見直し」に多くの項目を割いている。同会長は「組合は職場環境の整備に先んじて取り組む役割がある。『仏作って魂入れず』という言葉があるが、(労働法改正に)魂を入れるのは私たちの役割だ」と語った。

     討論では、要求基準への異論はなく、非正規労働者の底上げや、中小企業の格差是正について、社会により強く連合のメッセージを打ち出す方針にすべきとの意見が相次いだ。16闘争から始めた、地場経営者や自治体関係者と地域経済について懇談する地域フォーラムや、公正取引の推進、働く者の事情を無視した商慣行の是正など、賃上げや働き方見直しを進めるための環境整備に前向きな提案や報告が続いた。

     一方、安倍政権が「3%賃上げ」を要請したことに関連し、「官製春闘と言われるのは大変しゃくだ。そう言われない取り組みを」との意見も。この問題で、神津会長は「(首相は)トリクルダウンの発想から抜け出せていない。それでは格差拡大が危惧される。数字も大事だが肝心なのは中身。中小地場の取り組みが決定的に重要だ」と記者らに述べている。

     討論を受けて、相原康伸事務局長は「中小、非正規に特化するという合意ができつつある」と述べ、底上げ、格差是正をより重視する意向を語った。

     

    ●大衆行動も検討

     

     ワークルールに関する分科会では、水町勇一郎東京大学社会科学研究所教授が「働き方改革」の法整備に合わせた、労使間の制度整備の取り組みを促した。構成組織からは、来年春に発生する、有期雇用労働者の無期転換申込権について、取り組み強化を求める意見が出された。

     全体討論では、全国ユニオンが、高度プロフェッショナル制度の創設などに反対する、大衆的な行動の配置を要望。本部からは「どのタイミングで世論喚起をするか、検討したい」との答弁があった。