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    「生産性向上」の追加は不適切/全労働が見解/雇用対策法改正案の問題点

     労働基準監督署や職業安定所(ハローワーク)の職員でつくる全労働省労働組合(全労働)は10月末、政府が国会提出を予定している雇用対策法改正案について見解をまとめ、問題点を指摘した。法の目的に「労働生産性の向上」を追加することに関しては、人減らしや過密労働を促進する恐れがあるとし「産業政策の目的にはなり得るとしても、労働政策の目的とすべきではない」と批判した。

     同法案は、政府が来年の通常国会に提出を予定している「働き方改革関連法案」の一つ。従来は雇用政策の基本法と位置付けられてきたが、改正案では「労働法の基本法」へと格上げし、名称も変更する。法の目的に生産性向上を追加したほか、雇用関係によらない「多様な就労形態」の普及もうたっている。

     労働生産性を向上させるには(1)技術革新などを通じた付加価値の増大(2)労働投入量の削減――という二つの手法がある。全労働見解は、過去20年で日本の労働生産性が2割上昇したのに、実質賃金は低迷していることを挙げ、現実にはリストラなど労働投入量の削減だけが進みかねないとの懸念を表明している。

     雇用対策法が「労働法の基本法」と位置付けられることも問題視。生産性向上を図る目的で、労働基準法や労働安全衛生法が規制緩和されかねないためだ。

     

    ●個人事業主化を懸念

     

     全労働は「多様な就労形態の普及」についても批判し、政府が推奨する労働者の個人事業主化が狙いではないかと分析。労働法や社会保険適用が除外される可能性に言及し、「実効ある法的保護を欠いたままで、こうした就業形態の普及を図るべきではない。国会などでの十分な議論が必要」と訴えている。