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    「雇用によらない働き方」は危険/日本労働弁護団シンポ/労働者の権利行使が困難に

     日本労働弁護団が結成60周年を記念する総会とシンポジウムを11月10日、都内で開いた。シンポでは、「雇用によらない働き方」で労働者の権利行使が困難になることが訴えられた。

     

    ●働き方改革の抜け穴

     

     個人請負問題を取材してきた東洋経済新報社の風間直樹記者は「深刻な労働問題の背後には人を雇わないで活用するシステムがまん延している」と指摘。「無権利状態の個人請負の増加は働き方改革の抜け穴になる」と批判した。

     ブラック企業問題に取り組んできた佐々木亮弁護士は「雇用によらない働き方」の問題点に触れ、「テレワークなどの在宅の仕事では指揮命令がどの程度あったかの立証が難しくなり、年次有給休暇など労働者の保護が及ばなくなる可能性が高い」と述べた。その上で「技術の発達でテレワークの流れを止めることはできないが、労働者の権利をどう守るか知恵を絞っていく必要がある」と話した。

     

    ●労働実態での判断を

     

     上田絵理弁護士は業務委託で働いていた自動車修理工の事例を紹介。「1社専属で働いていたが、けがをしても補償がなく、会社から放り出されてしまった。労働者として同等の仕事をしていても、いざ権利を求めると、業務委託であることが壁になってしまう。労働者でないというなら会社側の反証を必要とするなど、実態にあった法制度にすべきだ」と強調した。

     全国ユニオンの鈴木剛会長は「社員がリストラされて、不安定な雇用形態や外注に切り替えられるなど、弱い立場の労働者が増加している」と指摘し、こう述べた。「業務委託という形態よりも労務の実態と労働者性がどうなっているのかが大事。労務を提供している実態があるなら『形は委託でも実際は労働者だ』と、ためらわずに主張するべきだ」。