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    個人請負推進へガイドライン案/柔軟な働き方検討会/副業・兼業解禁には労使慎重

     厚生労働省の「柔軟な働き方に関する検討会」は11月20日、テレワークや副業・兼業に関するガイドライン案を示した。インターネット上で仕事を受発注する個人請負的な働き手を増やしたい経済産業省の報告書に沿った見直し案だ。保護規制を求める労働側と、規制を薄めたい使用者側とで意見が分かれた。副業・兼業については、労使ともに慎重姿勢をとっている。

     同検討会は10月にスタートし、4回目のこの日は労使団体へのヒアリングが行われた。

     

    ●問題多い「自営型」

     

     職場ではない場所で仕事をするテレワーク。在宅だけでなく、自宅に比較的近い仕事場で働くサテライト勤務や、自由に働く場所を選べるモバイル勤務に対応するとして、前回2008年に次ぐ見直しを行う。

     改定案では、育児や介護などで仕事を離れる「中抜け時間」や移動時間の扱いを定めている。事業場外みなし労働制を引き続き適用できるとしたほか、フレックスタイムや裁量労働制の労働者も利用できること、長時間労働とならないよう時間外や休日・深夜のメール送信の自粛、社内システムへのアクセス制限を行うことなどを盛り込んだ。

     自営型テレワークについては10年に一部改訂されたガイドラインを見直す。近年仲介業者がインターネット上で、発注者と自営業の在宅ワーカーをつなぐ「クラウドソーシング」などのビジネスが増加。経産省の研究会が今春、「多くの企業の活用」を打ち出し、働き方改革実行計画にも、「非雇用型テレワーク」として環境整備を盛り込んだ経緯がある。

     改定案では、報酬支払いや納期などの契約条件の適正化についてルールを拡充するほか、募集に関する規定などを補強。報酬については「最低賃金を一つの参考として決定することも考えられる」とした。

     この働き方の多くは手間がかかる割に収入は低く、子育て中の専業主婦など家を離れにくい働き手が主体の従来の「内職」に近い。ガイドラインも強制力はない。

     この規制のありようをめぐって労使の意見が分かれた。連合の村上陽子総合労働局長は、募集から契約解除まで各段階でのワーカー保護のルールを設けるべきと発言。仲介事業者に対し職業安定法上の規制を検討することや、法律に基づくガイドラインに格上げし、実効性をもたせるよう主張。経団連の輪島忍労働法制本部長は「過度な規制とならないよう、通常の請負契約との整合性をとるべき」と規制強化をけん制した。

     

    ●誰も望まない改変

     

     副業・兼業についてはガイドラインを新設する。骨子案では人手不足が進む中、企業にとって社内では得られない人材の獲得や商機の拡大につながるという利点を強調している。

     13年の中小企業庁委託調査によると、副業・兼業を認めていない企業は85%。職務への専念がおろそかになることや情報漏えいへの懸念から、多くの企業が及び腰だ。この問題でも経産省が昨年、解禁に向けて好事例集をまとめるなど規制緩和の旗振り役を務めている。

     同案では、厚労省のモデル就業規則で「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」とある文言を、「事前に所定の届出を行う」と改める。

     ただ、ほぼ確実に長時間労働になることや、安全配慮義務や社会・労働保険負担の案分、労働時間把握の難しさなど、課題は多い。経団連の輪島氏も「長時間労働の是正に取り組んでいる中、やや抵抗感がある」と不安を口にした。中小企業団体の代表からも、まずは未整理の課題の解決を先行させるべきとの意見が出され、「従来の使用者の責任で担保する労働法との関係で大きな問題がある」(小西康之明治大学教授)と拙速を戒める見解も示された。