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    日本型長期雇用の抜本改革を/労政審基本部会の発言/現行労働法が技術革新を邪魔?

     働き方に関する中長期的な課題などを検討する労働政策審議会労働政策基本部会の第3回会合が、12月5日に開かれた。この日は「AI(人工知能)等技術革新の動向と労働への影響」についてヒアリングが行われた。特定の委員からは「現行労働法制が技術革新の邪魔をしているのではないか」「日本的雇用慣行の抜本的な見直しが必要」などの発言が飛び出した。

     

    ●労働法制の大手術を

     

     ヒアリングでは「AIの技術が普及することで終身雇用など日本の雇用が変化し、人材の流動性が高まる」などの指摘が専門家からあった。

     この問題に関連して山川亜希子委員(弁護士、フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所)は「日本的雇用慣行を抜本的に変えていく(ことの)是非を問いたい」と強調。「今の労働法制は長期雇用を支持するような内容であり、細かい条文ごとでなく労働法制自体を抜本的に変えていく議論をすべき」と持論を述べた。佐々木かをり委員(イー・ウーマン代表取締役社長)もこれに賛同。「労働政策の未来に向けての組み立て直しをこれまでしてこなかった。(労働政策について)変えるのか、大きな手術をするのか意見交換したい」と迫った。

     

    ●慎重な議論求める声も

     

     両委員の指摘に対し、性急な議論をいさめる発言も他の委員から出された。

     古賀伸明委員(連合総研理事長)は「技術革新で社会が大きく変わるときには光と影の部分が出てくる。労働法制は影の部分に対して目配りをするためにある」と指摘。「雇用環境の変化で生じる経済的不平等・格差を含め、影の部分を長期的に考える政策を作る必要がある」と話した。

     岩村正彦委員(東京大学法学部教授)も「現実的な政策を考えていく必要がある。あまり急激に仕組みを変えて社会を混乱させるのは望ましくない」と、拙速な議論をけん制した。その上で、「雇用の流動化は労働法制だけではなく社会保障制度の問題でもある。高エキスパート(専門家)と、そうではない労働者との間で働き方に差ができていくのは事実で、この部分は経済産業省と厚生労働省で引き続き考えていく必要がある」と述べた。