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    200人超の非正規教員に通告/全国私教連の雇い止め調査/「無期転換逃れの疑い濃厚」

     全国私教連が1月23日、私立高校で働く非正規教員(常勤講師、非常勤講師)の雇い止め実態に関する調査結果を発表した。無期雇用転換権の本格始動(今年4月以降)前に、学校がどんな対応をしているかを調べるのが目的。把握できた範囲で雇い止め通告を受けたのは常勤講師82人、非常勤講師122人だった。団体交渉などで撤回させたり、無期転換の約束を取り付けたりした例も報告されている(表)。組合は「調査結果は氷山の一角。年度末に向けて労働契約法に基づく対応を迫っていく」と話している。

     調査は昨年10~12月、590校にある加盟組合を対象に実施し、216校から回答があった。

     経営側の対応として「雇い止めする方向」と答えたのは、常勤講師のケースで28校、非常勤講師で38校。組合は「契約更新が5年を超えないように3年や4年で雇い止めする学校や、5年で雇い止めして、複数の学校間で使い回すケースさえある」という。

     一方で、無期転換や専任化(正規化)の事例も少なくない。常勤講師については、「無期転換・専任化を進めている」が64校、「無期転換を明示した就業規則になっている」が16校あった。非常勤講師では、「無期転換を明示した就業規則に変更した」が35校、「専任教諭か常勤講師への転換を行っている」が23校という結果になっている。

     

    ●選別対応の恐れも/私教連の雇い止め調査

     

     私教連アンケートの自由記入欄では「無期転換する対応と雇い止めする方向の両方がある」など、経営側が残したい人材だけを無期や専任にして、そうでない人は切り捨てる対応もうかがえる。「組合と近い人は1年でいなくなってしまう気がする」など、不当労働行為を疑わせる報告も寄せられた。

     組合は雇い止め通告について「経営側は無期転換回避のためとは言わず、教員の資質の問題という理由を付けているが、昨年と今年の事例ではそういうこと(無期転換逃れ)が念頭にあるのではないか」とみる。実際、経営側弁護士団体である経営法曹会議メンバーが私立学校経営者に向けて無期転換に対応するためのセミナーを開いており、「トラブルを起こさず雇い止めする方法」などが指南されているという。

     

    〈用語解説〉常勤講師と非常勤講師

     

     どちらも有期雇用という点では同じ。非常勤講師はいわゆるパート職員ですが、常勤講師は正規の専任教員と同じ働き方をしています。フルタイム勤務で、学級担任や部活動顧問、PTA対応、職員会議への出席・議決権などの点でも専任と同じです。専任教員に比べ人件費が安く、雇用が不安定なのが大きな違いです。2017年時点で全国に8412人。私教連は「同一労働同一賃金」の原則に照らし、この制度はなくして専任教員にすべきだ」と要求しています。