「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    長時間労働の是正を模索/民放労連臨時大会/「ベア獲得」への決意も

     民間のテレビ・ラジオ放送局や関連職場の労組でつくる民放労連が1月27、28の両日、都内で春闘方針を決める臨時大会を開いた。代議員からは「ベア獲得」への強い決意や、恒常的な長時間労働をどう是正するかの模索が多く語られた。統一要求基準は「誰でも2万円以上」など4本柱を設定している。

     

    ●優秀な人材採れない

     

     赤塚オホロ委員長は、人工知能(AI)をはじめとする「産業革命」に対応するためにも「人への投資を大切にすべきという方向への発想の転換が必要」と指摘。「賃金を下げて競争力を高めるやり方はもう通用しない。春闘には強気で臨もう」と訴えた。

     TBSの36協定違反に対し、労働基準監督署が是正勧告した問題についても言及し「組合は真摯(し)に受け止め、改善策を要求してほしい。行政指導を経営側に守らせるのも組合の役割だ」と述べた。働き方改革による長時間労働の是正が進んだ場合は「残業代の減少分をベアで補えと要求すべきだ。(処遇改善の)チャンスでもある」と強調した。

     討論では、長時間労働のまん延と低コストでの番組づくりによって、人材難に陥っているとの指摘があった。読売テレビ労組は「募集しても人を採れず、優秀な外部スタッフが退職し、番組制作が厳しくなっている。残業は人と金を増やさないと減らない。業界全体として人を育て、残すことを考えたい」と述べた。

     長時間労働の是正については、経営側にもさまざまな動きがあるものの「会社施策は残業減らしだけに終始しており、社員にとっては残業代削減と(番組制作上の)モチベーション低下を招いていて悩ましい」(静岡朝日テレビ労組)、「裁量労働制が導入されて働きやすくなったのは、早帰りできる上司だけ。若手は残って仕事をしている。それでも若手は中途半端な状態で『帰れ』と言われないだけましという意識。これでいいのだろうか」(朝日放送労組)などの声が出された。

     新たに裁量労働制の導入や副業の解禁、テレワークの実施という動きがあることも紹介された。

     

    ●ストの効果を実感

     

     賃上げとの関係でも「36協定に労組が判を押さなければ、残業は違法になる。春闘での交渉材料になる」「労働時間が短くなるのであれば、当然労働密度は増している。それを踏まえたベア要求は当然」「残業代が減れば生活に影響する。基本給を引き上げるチャンスだ」などの声が続いた。

     広島テレビ労組は、協定を無視した「乱暴な人事異動」に対して組合員の怒りが爆発し、2時間ストライキを3回実施。結果として一時金増額と諸要求へのプラス回答を勝ち取れたと報告。「ストの効果を組合員が実感した。組合役員をやりたいという若手も現われている」と語った。

     

    ●無期転換権を確保/2018年問題への対応

     

     民放労連の臨時大会では、「2018年問題」への対応も焦点になった。

     京都放送労組は派遣労働者の雇い止めが懸念される9月末を待たず、直接雇用を実現した取り組みを報告した。派遣労働者の直接雇用制度を導入しており、昨年11月に適用したものだ。

     今年4月以降、改正労働契約法に基づく無期転換が本格始動する。「無期転換を回避するため5年上限を理由に雇い止めの提案が出ている。悪質であり、交渉ではね返したい」(放送スタッフユニオン)。沖縄のRBCビジョン労組は、出産を控えた労働者への雇い止めを撤回させ、謝罪とともに無期転換権と社員登用試験の受験資格も約束させたと報告した。