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    老後に備える 財産管理と節約(1)/いざという日のために

     1人暮らしの80代男性Aさん。頭も体もしっかりしているので、お金の管理も自分でやっていましたが、ある日、脳梗塞で入院。近くに住む娘が駆け付けたものの、入院費支払いの段になって困ってしまいました。Aさんの預金通帳から入院費用を出そうとしたら、簡単にはいかないことが分かったからです。

     キャッシュカードは暗証番号が分からないので使用不可。通帳と印鑑を持って銀行窓口に行くと、「本人以外は下ろせません」。交渉の末、親の委任状と戸籍謄本、診断書、入院費の請求書、本人確認書類などが用意できればということになりましたが…。

     いま全国で、病気や認知症になった親の入院費用や介護費用を預金から下ろせないというトラブルが増えています。親に委任状を書いてもらえれば、引き出しは可能ですが、意識不明だったり、認知症で判断能力がないとされたりした場合は、「預金凍結」という恐ろしい事態も。引き出しまでのハードルがさらに上がってしまいます。

     こうした事態を想定して、元気なうちから配偶者や子どもたちと財産管理について話し合っておくことが大切です。入院や介護に備えて一定額を普通預金で管理し、暗証番号も教えておくのが一つ。親の状態によっては「家族信託」や「成年後見制度」の利用も選択肢の一つです(続く)。