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    インタビュー/徴兵拒み始めた韓国の若者/作家・雨宮処凛さん

     平昌五輪開催を控え、テロ警備などの訓練を強化する韓国軍。軍には職業軍人のほか徴兵制により集められた民間の若者も多くいる。同国の徴兵制については、良心的徴兵拒否が認められない点などに国連から是正勧告が出されている。長年この問題を追っている作家の雨宮処凛さんは「近年は韓国の若者も徴兵制の後進性に気づき始めている」と言う。詳しく話を聞いた。

     

    ●貧困撲滅も課題

     

     ――韓国の徴兵制の何が問題か?

     雨宮 入隊に当たり、携帯電話などの私物を持ち込めず、外部と隔離した生活を強いられる。閉鎖的な環境で、いじめによる自殺も多い。2014年6月には深刻な暴行殺人と銃乱射事件が2件起き、問題になった。親たちが抗議の声を上げたが、韓国内のメディアは大きく報じなかった。草の根の市民運動が政権打倒に結びつく民主主義国家の韓国には、こんな別の顔がある。

     ――若者を2年間入隊させる経済的な損失は?

     雨宮 兵役中は公共工事などにも従事させられる。若い労働力を安く搾取できる仕組みになっており、国に損はない。文在寅政権は、徴兵制を見直す方針といわれるが不透明。韓国の若者の間では貧富の格差が拡大している。それが是正されないと、徴兵制を廃止しても結局、生活困窮者が志願入隊する形となるだろう。

     

    ●日韓の連携を

     

     ――海外に逃れる若者もいると聞く

     雨宮 留学先で結婚や就職などをして在留資格を得た場合、韓国での兵役義務は事実上なくなる。そういう形で結果的に兵役を逃れた韓国人は日本にも住んでいる。12年には初めて「人殺しの訓練をしたくない」と明確に主張して、フランスへ亡命する男性が現れた。

     日本で暮らす韓国人の知人は、こうした動きに注目し、亡命のノウハウなどを母国の若者たちにインターネットで広めている。富裕層が税金の安い国に国籍を移し、自国への納税を回避するように、韓国の若者も住みやすい国を選べばいいという考えだ。若者を大切にしない国は、若者に捨てられる。租税回避ならぬドラフトヘイブン(徴兵回避)により、それを韓国という国に分からせる作戦だという。

     ――日本人にできることは?

     雨宮 韓国の若者は、ベトナム戦争に反対した「ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)」など日本の平和運動について学んでおり、連携を深めたい。

     日本の若者の間で韓流ファンも増えている。好きなアイドルが2年の兵役期間、活動休止するのはさびしいもの。「〇〇君の徴兵明けまで、あと〇日」と計算するアプリまで開発されている。エンターテインメントを入り口に、徴兵制の背景にあることについてもファンたちの関心が広がることを願いたい。