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    老後に備える 財産管理(3)/家族信託

     自分も配偶者も高齢になってきて自宅(不動産)や預貯金の管理が心配――こうしたケースで息子や娘に財産管理を委ねる仕組みが「家族信託」。10年ほど前にできた比較的新しい制度で、成年後見制度のデメリット(長期にわたる報酬の支払いなど)を補うものとして、最近注目されています。

     家族信託は、本人(親)の所有する資産(不動産や金融資産など)について、親族(子どもら)などと信託契約を結び、その管理・運用・処分に関する権限を託しておくものです。

     本人が入院中に認知症を発症し、退院後は有料老人ホームに入るというような場合も、家族が家族信託を結んでいれば自宅売却や定期預金を解約できるので、介護費用捻出の不安が軽減されます。

     家族信託を結ぶ相手は親族のほか、親しい友人なども可。通常の手続きは、弁護士や司法書士などの専門家に依頼し、公正証書として信託契約を交わします。信託契約書の作成には、財産額に応じて20~数十万円程度の費用が必要になりますが、毎月の報酬は必要ありません。

     この制度の難点は、確実に信頼できる親族や友人がいる人に利用が限られること。「子どもがギャンブル好き」「浪費癖がある」といった場合には、信託は難しいでしょう。