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    〈働き方改革レポート〉いわれなき〃差別〃にあらがう/郵政ユニオンの20条裁判

     有期契約労働者と期間の定めのない労働者との不合理な格差を禁止する労働契約法20条。東京地方裁判所は昨年9月、日本郵便で働く有期契約労働者(期間雇用社員)について、年末年始勤務手当の不支給などを「不合理な格差」と認め、是正を命じた。やっとこじ開けた〃差別〃是正の扉。これを本格的な処遇改善につなげられるかどうか。控訴審を含め闘いは続く。

     

    ●時給アップは死活問題

     

     原告の一人、浅川喜義さんは郵政民営化がスタートした2007年、時給制で半年更新の期間雇用社員の契約を結んだ。現在の勤め先の晴海局(東京・中央区)は、大手企業本社やタワーマンションが並ぶ月島・豊洲エリアを含む。タワーマンションは多くの世帯が集中するため、事前の入念な仕分け作業が円滑な配達に不可欠だった。ところが、コスト削減をすすめる会社は、「内務組立」の短時間パートを2010年9月で大量解雇。配達者の局内作業の仕事量は増え、配達準備が遅れれば当然、配達作業にもしわ寄せが生じた。

     さらに会社は通常郵便と、書留などの対面配達を分業する「ツーネット」方式を廃止。郵便物の種類にかかわらず、担当エリアの業務を1人で完結させる配達方式に転換した。主に正社員が担っていた対面配達を期間雇用社員も行うようになり、仕事は全く同じ内容になっていった。

     残業しなければ仕事は終わらない。正社員からは「時給の安い非正規に残業させればいい」などの心ない発言も聞こえてきたという。浅川さんの時給はなかなか上がらなかった。

     

    ●更新2カ月前に人事評価

     

     時給アップは上司の評価次第だ。1次評価者は直属の班長や副班長だが、2次は課長・部長クラス、最終は局長だ。1次以外は働きぶりを直接見ているとは限らず、顔と名前が一致するかさえ怪しい。「時給も上がらないのに、ささいなミスで次の雇用がなくなるのでは、と評価を気にしてびくびくしている」と浅川さんはいう。

     

    ●替え玉受験可能

     

     裁判で浅川さんら期間雇用社員との比較対象になったのは限定正社員的な「新一般職」だ。会社の人事・給与制度によると、「総合職」と「地域基幹職」の下に位置付けられている。標準業務で転勤や役職登用はない。

     期間雇用社員から新一般職への登用は制度的には可能だが、受験者数が多いとの理由で2年前から1次試験はウェブ上の試験になった。社員番号とパスワードがあれば替え玉受験も可能だという。

     

    ●まずは格差是正の第一歩

     

     不正可能な登用試験、そして仕事ぶりを知らない管理者による人事評価――。期間雇用社員にとって正社員登用のハードルは高い。

     亀井静香郵政・金融担当相(当時)は2010年3月、10万人の正社員化を打ち出した。初年度は3万4098人が応募。試験の結果、合格者は8438人だった。8年後の今も正社員登用は狭き門だ。

     「正規と非正規で入口が違っても同じ仕事なら待遇は同じはず。格差を乗り越えるには、裁判勝利が大切」と浅川さん。東京地裁判決では(1)年末年始勤務手当8割(2)住宅手当6割(3)夏期冬期休暇(4)病気休暇――の是正命令を勝ち取った。

     本部の中村知明書記長は「判決は格差是正の第一歩。今や非正規のいない職場はない。全国で非正規の声に耳を傾け、20条を武器に職場で要求化することが必要だ」と強調している。

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     同様の西日本裁判では2月21日、大阪地裁で判決が下される。