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    〈働く・地方の現場から〉共闘の力で真の働き方改革を/ジャーナリスト 東海林智

     政府が進める「働き方改革」は、今国会の一大争点だ。「非正規の言葉を一掃する」だの「最大の成長戦略」だの安倍晋三首相の鼻息は荒い。昨年末の衆院選の結果もあり、労働側は押されっぱなしの印象もあるが、反撃の芽は出始めている。衆院選でも与党の勝利を許さなかった新潟県内の動きを報告したい。

     

    ●ごちゃまぜ法案だ

     

     「新潟の特定の酒蔵では、たまに、人気のある日本酒に不人気な商品を抱き合わせで売る。『ひでぇ商売しやがって』って嫌われるけど、政府がやっているのはまさにそれだ」

     新潟市のベテラン労組員は、政府の「働き方改革推進一括法案」を、吐き捨てるようにそう言った。

     政府がよく使う手ではあるが、本来個々に審議しなければならない重要な法案を〃一括〃の名の下に、審議を省略するのだ。今回の一括法案には、労働基準法から労働者派遣法、労働契約法など八つの法案が含まれている。労基法改正案には、労働時間の上限規制(単月100時間未満、年720時間)と、高収入で専門的な仕事の労働者を労働時間規制から除外する「高度プロフェッショナル制度」の創設、裁量労働制の対象拡大、中小企業での月60時間超の時間外に対する割増率引き上げ――などが混ぜ込まれている。

     一括と言いながら、方向は一つではなく、規制も自由化もごちゃ混ぜだ。労働時間の上限規制が機能するかは別として、規制と除外(高プロ制)が共に並ぶことに、西村智奈美衆院議員(新潟1区選出)は「上限規制と邪悪な仕組み(裁量制、高プロ制)が一緒になっているものを審議できない」と述べたほどだ。

     

    ●新潟で共闘組織結成

     

     そんな状況の中、2月17日に新潟市で「雇用共同アクション@新潟」の結成集会が開かれた。参加したのは、新潟県労連に新潟地区労会議、全港湾新潟支部、新潟地区労連と新潟県国公・全労働新潟支部、建交労新潟県本部など。各組合や団体が組織の垣根を越え、働く者の立場に立った働き方改革を求めて声を上げようと結成した。全労連や全労協、中立の労組が中央レベルで取り組んできた全国雇用共同アクションに地方から呼応したものだ。地方で雇用共同アクションが結成されるのは、大阪に次いで2番目だという。

     集会のパネル討論で全労働省労働組合の森崎巌委員長は「真の働き方改革は、労働者の働く現実から出発しなければならない」と述べ、政府主導の働き方改革が現実から乖離(かいり)していることを批判した。さらに、一括法に「生産性の向上」が目的に書き加えられていることの危うさを指摘した。会の共同代表で全港湾新潟支部の鈴木龍一支部長は「安倍首相は働き方の問題を経済問題だと言う。これで誰のための改革かは明らか。働く者のための改革にするため共に力を合わせたい」と述べた。

     

    ●選挙の経験生かして

     

     新潟でこうした共同行動が生まれた背景には、一昨年の参院選挙から知事選、昨年の衆院選と野党共闘で選挙に勝ち続けてきた経験がある。組織が違う労組も野党共闘の立場で共に行動した。同じく共同代表の佐藤弥一県労連議長は「選挙で共闘してきた経験は大きい。共同して闘うことで現状を変えることができると学んだ」と話す。

     会場には、連合傘下の組合員も少なくない数が参加していた。巨大与党に立ち向かうためには何が必要なのか、新潟の人々はよく知っている。諦めず、小さな声を束にしてぶつけて行くことが巨大な力にあらがう手段であることを全国に示している。