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    老後に備える 遺産相続(1)/書いて損のない遺言書

     数年前の冬、入浴中にヒートショックで亡くなった70代男性。予期しない死だったため、遺産相続は困難を極めました。どの銀行に預金がいくらあるのかなど正確なことは、妻も知らなかったからです。遺族は家中をひっくり返しましたが、全ての通帳や株券を発見できたのかは結局分からずじまいでした。

     こうしたトラブルを防ぐ上で大切なのが遺言書です。「たいした資産はないから…」などの理由で作らない人が多いといわれますが、少額資産でも苦労するのは遺族。遺産分割の対立回避にも力を発揮します。

     


     遺言書は大別して(1)自筆証書遺言(2)公正証書遺言――の二つ。自筆遺言は、全文・日付・署名を自分のペンで書き、押印したもの。書いた時点での届け出は必要なく、相続開始時に家庭裁判所で「確かに故人の遺言です」という「検認」のお墨付きをもらいます。

     日本財団の調査では遺言書作成者の7割が自筆を選択していましたが、自筆には記入漏れなどの不備で無効となったり、誰にも発見されないままに終わったりというリスクが指摘されています。

     公正証書遺言は、「この財産を誰に分けたい」といった遺言者の口述内容を公正役場の公証人が作成します。専門家が作成するので、記入漏れなどを回避することができるのがメリット。相続財産の額と分割人数によっては、数万~十数万円の費用がかかることがデメリットです。