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    支援打ち切りで困窮化進む/原発事故の自主避難者

     福島第1原発事故の避難指示区域以外から避難した自主避難者への、災害救助法に基づく住宅支援が昨年3月、打ち切られた。それから1年。自主避難者に生活困難が広がっている。支援団体は「生活困窮の訴えや生活保護の申請が増えている」と指摘する。

     事故後に政府が決めた避難基準「年間被ばく線量20ミリシーベルト」は一般の被ばく限度の20倍。自主避難が相次いだ背景には、この高すぎる基準への不安がある。郡山市から母子で避難した女性は「当時12歳の娘が鼻血を出したことがきっかけ。子どものために避難した」と訴える。

     福島からの自主避難者を対象に東京都が昨年10月に実施した調査によると、月収10万円未満の世帯が2割以上、過半数が20万円未満だった。人間関係では6人に1人が「連絡や相談をする相手が誰もいない」と回答している。

     同様の調査は新潟県でも実施。非正規就労者の割合は避難前の20・9%から34・5%に増加(自主避難者)し、世帯平均月収は避難前と後で10・5万円の減少(避難者全体)。長年の友人・知人との付き合いや近所とのつながりが薄くなった人が7割以上(同)などの結果が出ている。

     3月9日に都内で行われたシンポジウムで、NGO団体FoE Japanの満田夏花さんは「『家賃支払いが難しく途方にくれている』『身近に頼る人がいない』といった声が寄せられている。経済的な貧困に加え、つながりの貧困化も深刻だ」と指摘。国による支援の必要性を訴えた。