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    「一人親方」の救済命じる/東京高裁/首都圏建設アスベスト訴訟

     建設資材のアスベスト(石綿)により肺がんなどになったとして、元建設労働者が国と製造企業を相手取り、損害賠償を求めている「建設アスベスト訴訟」。東京高裁は3月14日、首都圏東京第一陣訴訟について国の責任を認める原告勝訴の判決を言い渡した。賠償金の支払い対象を「一人親方」(個人事業主)にまで拡大したのが特徴だ。

     同種の訴訟は全国で行われており、防じんマスクの着用義務付けを怠った国の責任を認めた判決は8度目。

     過去には救済対象を「労働者性のある個人事業主」にまで広げて個別救済した判決もあったが、今回のように幅広く一人親方や中小事業主保護を命じたのは初めて。一方、建材メーカーなど製造企業の責任は2012年の一審判決同様に認められなかった。

     

    ●基金創設に弾み

     

     マスク着用義務付けなどの規制を開始すべきだった時期について、一審判決は「1981年」としていたが、今回の高裁判決では「75年」とした。違法とされる時期を早めたことで救済範囲が広がり、賠償対象は327人(一審170人)に、金額の総額は約22億8千万円(同10億6千万)になった。

     一人親方として働いてきた原告団長の宮島和男氏は、記者会見で「今まで救済が認められるのは労働者ばかりで、むなしかった。今日は、判決を聞いた娘が泣いていたことで勝利を実感した。10年は長かった」と述べた。

     原告団は国と建材メーカーの出資による、被災者救済のための基金制度創設を求めている。小野寺利孝弁護団長は「(高裁判決は)基金制度創設に弾みをつける、強力な司法判断だ。国には上告ではなく、(原告への)謝罪を求めたい」と評価した。