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    派遣切り懸念への対応迫る/全国ユニオンが厚労省交渉/「高プロ制で過労死自己責任か」

     全国ユニオンは3月15日、厚生労働省交渉を行い、今秋に派遣切りが懸念される「2018年問題」への対応を求めた。高度プロフェッショナル制度(高プロ制)については24日間・24時間連続勤務が可能になると指摘。過労死が自己責任とされる危険性も浮き彫りとなった。

     15年の秋、混乱のさなか強行成立した改正労働者派遣法は9月末で施行後3年。派遣期間の上限が一律3年に設定され、最初の期限を迎える。同じ派遣先で3年勤続した場合、派遣元に対し(1)派遣先への直接雇用申し入れ(2)新たな派遣先の紹介(3)教育訓練――などの「雇用安定措置」を義務付けている。だが、上限の直前で雇い止めを行う規制逃れが懸念される。

     交渉では、同じ派遣先で16年8カ月勤務し、昨年12月に雇い止めにされた女性が、働く者が守られない現状を告発した。

     派遣期間が3年に満たなくても勤続1年以上ならば、雇用安定措置の「努力義務」が課される。女性は雇い止めに際し、時給が400円も低い仕事先を派遣会社から提示された。派遣先の紹介は、労働者の経験や能力に照らして合理的でなければならず、著しく不利な派遣先を紹介することは制度の趣旨にはそぐわない。明確な基準がないばかりか、制度に対する認知度も低く、泣き寝入りせざるを得ないのが実情だ。

     そのため、ユニオンは規制逃れを図る悪質事例を示すなどの早期の周知を要望。同省は「ご意見を受けとめる」と答えた。

     

    ●過労死は自己責任?

     

     高プロ制については、過労死を防げない内容であることが改めて明らかになった。

     制度を適用するには、4週4日以上、年104日以上の休日確保が義務付けられる。1日8時間など労働時間に関する規制がないため、4週のうち最初の4日だけ休日を与え、後の24日間で24時間勤務させても違法にはならない。国会でも指摘されている問題だ。

     この指摘に対し、同省の担当官は、高プロ制の対象業務が、労働時間と成果との関連性が薄く、高度の専門性を要件としていることなどから、指摘されたような問題は起こりえないと述べつつ、「そうした働き方をするかどうか、時間も含めて労働者に任せるということ。最終的には労働者の判断」と説明した。

     働く時間を決める裁量があっても、過大な業務量や目標を設定されれば、長時間労働を余儀なくされる。この日のやりとりでは「健康確保措置」の履行の有無しか、行政のチェックが及ばない仕組みであることが示された。

     参加者からは「過労死は自己責任ということではないか。行政が監督指導できない法律はまずい」との声が上がった。