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    〈最賃千円時代の特定最賃〉(6)/看護師と介護職、全国適用で/医労連が新設の取り組み開始/月9万円の格差解消をめざす

     日本医労連(約18万人)はこのほど、看護師と介護職について全国適用の特定最賃を新設する取り組みを始めた。全国一律の制度を整備することで地域間や他産業との著しい格差を是正し、低賃金・過重労働がもたらす人員不足の解消をめざす。地方議会での意見書採択など、全国各地で世論を高め、国に対応を迫る考えだ。

     「そもそも社会的役割にふさわしい賃金になっていない上に、最低賃金の地域間格差が賃金にリンクしている。看護師でいえば、同じ国家資格なのに初任給で最大月額9万円もの格差がある。介護職では多くが最賃水準に賃金が張り付き、全産業平均より10万円も低い。全国一律の特定最賃の新設は、そんな不正常な状態を改善しようという取り組みだ」

     森田進書記長は看護師と介護職の特定最賃新設の意義をこう語る。

     看護師の所定内給与(厚生労働省の賃金センサス)は、需給関係による多少のぶれはあるが、おおむね最賃の低い地方ほど低い(グラフ)。そのため、賃金が比較的高い都市部への流出が生じ、看護師の偏在に拍車をかけているという。

     医労連は12年前にも、看護師と准看護師の産別最賃(前身の制度)新設をめざしたことがある。11県で新設の意向表明がなされ、労働者の合意集めに奔走。あと一歩のところまで肉薄した県もあったが、医師会などの理解を得られず、実現しなかった。

     今回は当時のように各県ごとに合意を集めて新設を申請するのではなく、全国適用の最賃新設を厚生労働省に申請し、中央最賃審への諮問、制度新設という道筋を描く。2018年度中の申請に向け準備を進めている。厚労相への要請署名と、地方議会での意見書採択を進め、世論を高めていく構えだ。

     

    ●労使双方にメリット

     

     低賃金を前提とした診療・介護報酬の改善も視野に入れる。森田書記長は「特定最賃の新設は看護師に安心して長く働いてもらえるようにするだけでなく、それに見合う人件費を保障するための診療報酬の改善にもつながる。労使双方にとってメリットがある」と強調する。

     介護職についても「介護職の低賃金は今や政府も認めている。政府は勤続10年以上の介護福祉士に月8万円の賃上げを掲げているが、介護職場はヘルパーをはじめ無資格職が混在している。介護福祉士に限定するのではなく、全ての職種で最低賃金を全国一律適用にして引き上げた方が賃上げ効果はある」。

     時給の設定額は、全労連傘下の地方組織が行った最低生計費調査を基に、老人福祉・介護事業で働く介護職は1500円、病院で働く看護職は国家資格を加味し、1800円程度を検討中だ。

     看護師と介護職はともに人員不足が深刻な職種。離職者の発生が、過度の繁忙を招き、次の離職を生む悪循環に歯止めをかけることは喫緊の課題だ。著しい地域間格差や低賃金による人員不足、外国人技能実習生の参入による賃金低下が危惧される中、国に早急な対応を求めていく。

     

    ●30年ぶりの全国適用へ

     

     厚労省によると、全国適用の特定最賃は、1989年に非金属鉱業で新設したのが最後(現在は廃止)。広域の設定では、90年に九州地方のタクシーの産別最賃新設の意向が表明されている。公正競争確保の必要性が検討されたが、県をまたぐ事業の実態ではなかったことなどから、「九州地方での競争関係にはない」との結論に至り、実現していない。看護師、介護職で実現すれば30年ぶりとなる。