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    労働行政はゆがんでいる/国公労連のシンポ/上西充子氏法政大学教授

     国公労連主催の「国民のための公務員制度めざす緊急院内シンポジウム」(4月11日)には上西充子法政大学教授がパネリストとして出席。「労働行政のゆがみ」について発言した。要旨を紹介する。

     

    ●意思決定過程の公開を

     

     働き方改革関連法案に盛り込まれている(労働時間規制を外す)高度プロフェッショナル制度には懸念が残るが、裁量労働制の削除は一安心だ。

     私が不適切データ問題を指摘し、野党による追及を経て法案から削除されるまで約1カ月。収束が早かったのは、労働政策審議会の資料が公開されていたためだ。加計学園問題などが収束しないのは、関連資料が非公開だからだろう。傍聴が可能な労政審のように、意思決定プロセスの公開は重要だ。

     

    ●説得力ない厚労相答弁

     

     裁量労働制の対象範囲拡大で過労死が増加する可能性について、首相は国会で「裁量制を違法適用する野村不動産のような企業には指導している」と、あたかも(監督行政の)好事例のように答えた。

     しかし、国が同社での違法適用を知ったのは、遺族が労災申請した後だった可能性が高い。朝日新聞が過労自死を報道した3月以降、「なぜ(過労自死があった)事実を隠すのか」との批判が高まり、加藤勝信厚労相は「遺族が公表を望まないからだ」と答えた。

     しかし、遺族は4月5日「公表に反対しない」とファックスで反論している。翌日に法案の閣議決定を控えていた加藤氏は「どなたからのファックスか分からない」と軽視した。労災認定した新宿労基署にも遺族からファックスが送られており、現場の職員たちは(加藤氏発言を)複雑な思いで聞いただろう。