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    〈働く・地方の現場から〉障害者に過労死残業の無情/ジャーナリスト 東海林智

     以前、このコラムで紹介した、新潟県教育委員会での過労死事件(今年1月)に大きな展開があった。亡くなった女性職員(当時42歳)に、難病の「骨形成不全症」があり、障害者枠で採用されていたことが明らかになったのだ。県はこのことを公表していなかったが、毎日新聞が取材を積み重ね、遺族から了解を得て報道した。

     この問題について、県は「プライバシーの保護のため」と事実関係を公表していない。県が公表の可否を両親に尋ねた形跡は見当たらない。そうなると、県の対応のまずさを隠すために公表しないのではないかと疑わざるを得ない。

     

    ●あえて長時間業務に

     

     実際、彼女はどのように働いていたのか。県が4月24日に公表した第三者委員会(会長・平哲也弁護士)の報告書から見てみる。

     亡くなる直前の昨年12月には154時間、11月は142時間の残業をしていた。過労死ラインの月100時間を2カ月連続で超えていた。県が当初公表した残業時間は、それぞれ40時間ほど過小だった。

     報告書によると、17年4~12月の9カ月間の残業時間は744時間で、単純計算で毎月80時間を超える〃過労死残業〃をしていたことになる。ちなみに16年度は649時間、15年度は1138時間と過労死ラインの残業を恒常的に強いられたことが明らかにされた。

     1人で担当していた仕事は、以前3~4人で分担して行っていた業務で、前任者も長時間労働だった。つまり、最初から長時間労働が分かっている担当に障害がある彼女を異動させた。女性は他の部署への異動希望を出し続けていたという。友人によれば、毎日新聞の取材に「家に帰っても仕事が頭から離れない」「(昼の)食事の時間も満足に取れない」などと過酷な仕事の現状を語っていたという。

     

    ●不誠実な県教委

     

     過酷な職場状況を暴いた報告書だが、彼女に障害があったことは明らかにしていない。同委員会は「死との因果関係は調査中」「報告書は勤務実態と背景を究明するもの」などとしている。

     勤務実態と障害は本当に関係ないのか、障害者に配慮もなく過労死ラインを越える労働を課していることは死亡の背景には関係ないと言えるのか――この点においては不誠実だ。

     県は、障害者雇用促進法が義務づける「障害の特性に配慮した必要な措置」が彼女の場合、何に当たり、どういう配慮をしていたのか――と追及する毎日新聞の質問には一切答えていない。県教委では2002年にも長時間労働が原因の過労自死が起きている。同じ所でまた繰り返されたのだ。痛ましい事態から何を学び、再発防止に生かすのか、その無責任ぶりにあきれる。

     

    ●メディアも問われる

     

     今回の事件は、大きな波紋を呼び始めている。毎日新聞の報道直後に開かれた厚生労働省の過労死等防止対策推進協議会では、この記事が取り上げられた。若年者の過労死防止への合理的な配慮を検討するとされていたところに、障害者と高齢者も加えることが議論された。厚労省関係者によると、今年7月に見直し予定の過労死防止対策大綱に障害者、高齢者への配慮が追加される見通しだという。

     過労死にどれだけ真剣に向き合うのか、メディアも含め、問われている。