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    沖縄レポート/あまりに無力な日本政府/相次ぐ「植民地状況」の数々

     名護市の辺野古新基地建設のための護岸工事着工から4月25日で1年が経ち、同23日から28日まで「辺野古ゲート前連続6日間500人集中行動」が展開された。毎日何百台ものトラックによって続く石材搬入を「人の壁」で食い止めようという取り組みだ。3日目の25日には800人(主催者発表)が集まった。大量動員された機動隊員が座り込む市民を早朝からごぼう抜きし、長時間拘束。逮捕者やけが人も連日出た。

     大量の車両がキャンプシュワブのゲートに入るため付近の渋滞が常態化し、周辺住民は反対運動にも反発を強めている。被害者、弱者の側が分断、対立させられる「植民地状況」が鮮明になっている。

     

    ●日米合同委文書は秘密

     

     日本が今も実質的に米国の占領下にあることを裏付ける事実を琉球新報が報じた(同26日付)。外務省から外交史料館に移管された文書の中に入っていた「日米合同委員会議事録」のファイルを、目録から削除したのだ。目録に基づいて行われた情報公開請求で、移管したことがミスだと分かったためだという。

     作家の矢部宏治氏や前泊博盛沖縄国際大学教授らが著作で明らかにしている通り、日米合同委員会は事実上、国会より上位にある超憲法機関だ。その議事録は「米側の合意がないと公開できない」という形式論で秘密扱いされている。

     4月17日には福岡高裁那覇支部で、情報公開を巡って国と県が争う裁判の判決があった。沖縄の道路は、米軍も使用するため米軍への提供区域内を通るものが多くある。米軍北部訓練場の一部を通る県道70号について、県と日米両政府の間で1990年に共同使用の協定が結ばれている。その内容に関する情報公開請求が2015年に行われ、県が開示を決定したところ、国が開示取り消しの裁判を起こしたのである。

     多見谷寿郎裁判長は一審判決を支持し、協定は日米合同委員会議事録の一部を構成すると認定して、県の控訴を棄却した。翁長知事は「情報公開は県民の権利であり、非公開とするには合理的な根拠が必要だと主張してきた。認められず残念だ」とコメントした。

     協定の内容は不明だが、生活道路に関わる制限があるなら生活情報そのものだ。それを日本政府は形式論で秘密にする。裁判所がそれを追認する。オスプレイが飛び交い、全国の自衛隊基地で日米共同使用が広がる。このような実態は全国にあるはずだ。

     

    ●日本は米の自治領土?

     

     金井利之東京大学教授の近著「行政学講義」(ちくま新書)は、日本を米国の「自治領土」と定義している。米国の自治領土・日本の中で自治を制限された植民地が沖縄だ。そして沖縄のような「植民地」は、日米合同委員会合意によって自在に増やし広げることができるのである。そのことを「日本人」はどれほど自覚しているのだろうか。

     4月28日は米軍属女性暴行殺人事件の発生から2年の日だった。遺族は日米地位協定に基づき損害賠償請求をしているが、米側は被告が米軍の直接雇用でなかったことを理由に支払いを拒否している。米国はあまりに身勝手であり、日本政府はあまりに無力だ。(ジャーナリスト 米倉外昭)