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    〈インタビュー〉高プロ制は欠陥法案だ・上/浜村彰法政大学教授/「成果で自由に働く」はうそ

     高度プロフェッショナル制度(高プロ制)の労働者保護規制はある意味、管理監督者(の規制)よりも悪くなります。管理監督者は経営者と一体となって働き、出退勤を自分で管理し、高額の報酬を得る。それと引き換えに労働時間や休日の規制が外されますが、それでも深夜規制は適用されます。

     高プロ制は、年次有給休暇以外、深夜を含め労働時間規制がほぼ全て適用されません。休日だけは修正を加え、4週4休を義務付けていますが、最初か最後の4日間を休みにして24日間連続24時間労働とすることも理論上は可能です。

     その狙いが「時間に縛られずに自由に働きたい労働者のニーズに応える」といいますが、私に言わせればそんなものはうそっぱちで、何よりも残業代支払い義務の桎梏(しっこく)から逃れたいという、経営側のニーズに応えたものでしかありません。

     「仕事の成果で賃金額を決める」としても、だからといって労働時間規制を完全に適用除外にする必然性はありません。賃金評価と時間規制は全く別の問題だからです。労働時間の上限を定め、法定の休憩を確保し、週休2日・祝祭日を含め年間115日完全に休むことと、賃金を成果で支払うことは両立します。

     ましてや法案は業務の遂行方法や時間配分を自分で決める権限を定めていないのですから、成果主義でも何でもありません。成果で評価するということは、働き方は任せ、どういう成果が出たか結果だけを見る、ということです。

     それが法案では使用者が指揮命令できるようになっています。ありえない話です。裁量がなく、労働時間規制が外されれば、成果が出るまで何時間でも働かせることができるようになってしまいます。

     現行の裁量労働制では業務遂行や時間配分について具体的な指示をしないことが要件とされているのに、なぜ高プロ制では認められないのか。11年前に廃案となったホワイトカラーエグゼンプションでは業務量やノルマについてある程度裁量、権限が認められていたのに、です。

     加藤勝信厚生労働相は業務遂行や時間配分の裁量について省令と規則で定めると国会で述べています。制度の本質的な要件ですから、法律の条文に書かなければ意味がありません。法案の重大な欠陥です。

     

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