「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    メディアの意識変えていこう/人権団体がシンポ/セクハラ・性被害の根絶を議論

     国際人権団体ヒューマンライツ・ナウが6月8日、「メディアで起き始めた #Me Too」と題するシンポジウムを都内で開いた。メディア関係者らが現場から問題提起し、性被害の告発に後ろ向きな現状を批判した。

     

    ●女性の声反映を

     

     元アナウンサーでエッセイストの小島慶子さんは「大手企業やメディアでは成績順に新人を採ると女性が多くなるため、女性を落とすという話をよく聞く。男性が多い現場では男女半々にするために女性を多く採用してもいいはずだ」と述べ、管理職に女性が多いカナダやスウェーデンの状況を紹介した。

     前財務次官のセクハラをきっかけに結成された「メディアで働く女性ネットワーク」のメンバーで、東京新聞記者の柏崎知子さんは「まだまだ女性記者は少数。加えて、決定権を持つ管理職にはさらに少ない。取材した性被害の記事を掲載したくても、男性上司と女性記者の考えが異なって扱いが小さくなったこともある」。

     「BUSINESS INSIDER JAPAN」の浜田敬子統括編集長は「メディアで働く女性の8割が取材先や取引先でセクハラを受けたことがある」という調査結果を紹介し、こう述べた。

     「私が新聞記者になった30年前は女性記者へのセクハラは当たり前だった。今も状況は変わっていない。セクハラをあしらえるのが『できる記者』と思っていたが、我慢することは次の世代が受けるセクハラへの加担となる」

     

    ●絶望はしない

     

     ネットメディア「BuzzFeed Japan」の古田大輔編集長は「当社の採用では3年前から性別を意識しなくても自然に男女半々となっている。管理職の男女比もほぼ同等。なぜ大手メディアではそうならないのか」と問題提起。「性被害を告発する#Me Too運動が日本で広がらないのは、メディアの側に問題があるからではないか。女性の声が反映されていない今の日本で『#Me Too運動はやりすぎ』という人がいるなら、その人が偏っていると考えた方がいい」とも指摘した。

     元TBS支局長からの性的暴行を告発する著書を出版したジャーナリストの伊藤詩織さんも登壇。「女性としてメディアで働くことは、暴力やハラスメントを受け入れることなのかと絶望したが、前財務次官のセクハラ報道から声を上げる女性たちが現れ、状況が変わってきた」と述べ、メディアを含め、社会の空気を変えていこうと呼びかけた。

     

    〈写真〉伊藤詩織さんは「人の尊厳を考えられないなら、真実を伝える報道の仕事はできない」と語った(6月8日、都内で)