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    金銭解雇システムの議論再開/法改正見据えて新たな検討会

     厚生労働省は解雇が無効とされた場合に金銭で解決する制度の創設に向けて専門的議論を行う検討会を設置し、6月12日に第1回会合を開いた。委員は有識者6人(座長・岩村正彦東京大学教授)。第2回以降は関係団体などからのヒアリングを行い、法改正を見据えて議論を進める予定だ。

     金銭解雇システムの検討は日本再興戦略の閣議決定を受けたもの。2015年に設置された「透明かつ公正な労働紛争解決システム等のあり方に関する検討会」で労働側委員らは、リストラに悪用される可能性などを懸念し、必要性がないと主張した。約1年半で20回に及ぶ議論を重ねても、合意に至らず、報告書には3論が並記された。今回の検討会では、前の検討会報告書を基に、法的問題に特化した議論を行う。垣内秀介東京大学教授と鹿野菜穂子慶応大学教授が引き続き委員を務める。

     解雇事件は通常、解雇が有効か無効かを地位確認訴訟で判断し、無効の場合は職場復帰が原則だ。厚労省は今回、解雇無効と金銭解決、労働契約終了を一体化し、早期解決可能な制度を創設することが至上命令だと説明。その上で、法的に違法な解雇を受けた労働者の金銭請求権の法定化と制度設計の議論を促した。

     神吉知郁子立教大学准教授は、検討会が閣議決定に基づくことを問題視し、制度の主旨は労働者の救済なのか、それとも雇用の流動性を高める目的なのかを質問。厚労省は「労働者の選択肢を増やす救済制度である」と述べた。

     今後の議論では、金銭の支払いによって労働契約を終了させる「労働契約解消金」とその権利である「金銭救済請求権」の内容、解消金の内訳と上限下限の設定などについて、諸外国の事例も参照しながら進めることが確認された。