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    労働者への同意強要も可能?/高プロ制/参院審議で問題点続々

     参院厚生労働委員会で6月19日、「働き方」法案の審議が行われた。労働時間規制を外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制)を中心に議論されたが、政府の説明のあいまいさがあらためて浮き彫りになった。自民・公明の与党からも法案への懸念が相次いだ。

     

    ●不利益変更も合法?

     

     高プロ制は、制度の導入に当たって労使委員会で決議する内容が10項目定められている。「いったん高プロ制適用に同意した労働者が、同意を撤回できる手続き」(7項)、「同意しなかった労働者に解雇その他の不利益な取り扱いをしてはならない」(9項)となっている。

     立憲民主党の石橋通宏議員は、企業がこれらの決議事項に違反した場合、法的にどう対処できるのかと質問。内閣法制局は6項以降の項目について企業が違反しても、労働基準監督署が罰則を科したり指導したりする仕組みはないと答えた。

     石橋議員は「高プロ制に関わって、不利益取り扱い禁止や合意の撤回事項に違反しても企業にはなんのおとがめも無いということだ。政府は、本人の同意があるから高プロ制は大丈夫だと言ってきたが、法律の欠陥ではないか」と追及。加藤勝信厚労大臣は「不利益な取り扱いはまず高プロ制に合意しないとできない」などと、すりかえともいえる答弁に終始した。

     「新規採用時に、会社から高プロ制に同意しなければ採用しないと言われたら違法か」との質問に対しては、厚労省の山越敬一労働基準局長が「採用前の段階では契約をしていないので違法ではない」と答弁した。

     採用前に高プロ制適用の同意を強要されたり、入社後に高プロ制適用を拒否したりした労働者に(労働条件の)不利益変更があっても救済する仕組みがないことが明らかになった。

     

    ●やはり経済界のニーズか

     

     共産党の倉林明子議員は、高プロ制創設のニーズ調査がずさんで、政府参考人からも制度創設に反対の声が相次いだことを指摘し、あらためて法案からの削除を求めた。

     政府の産業競争力会議で初めて高プロ制を提案したのが、当時の同会議民間議員、武田薬品工業の長谷川閑史会長だったことを踏まえ、倉林議員は「武田薬品工業は経済同友会代表幹事。時間で見れば、1カ月120時間を(残業の)上限に設定している会社だ。こういう(長時間労働を容認している)ところが高プロ制を望んでいる」と述べ、高プロ制は労働者ではなく、経済界の要望ではないかと追及した。

     

    ●与党からも注文続く

     

     参院厚労委員会では、与党議員からも高プロ制をはじめとした法案の内容について批判的な質問が続いた。

     自民党の藤井基之議員は政府が「成果で評価する」と説明してきた高プロ制について、「成果が出たかどうかどのように会社が判断するのか不明。評価の仕方を明らかにする必要があるのではないか」と指摘。同じく自民党の木村義雄議員は「労働時間の上限規制と(高プロ制など)企業の規制緩和をだんごにして出してきたのはやはり無理があった」と述べた。

     公明党の三浦信祐議員は6月14日の委員会で「法案には省令で定める事項があまりに多い。一体いくつあるのか」と質問した。厚労省は「約60項目ある」と答えている。制度の詳細について不明な点があまりに多く、国会のチェックが行き届かないまま、行政に白紙委任しようとしていることが明らかになった。