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    日本法人と労使関係を確立/東京管理職ユニオン/英製薬大手アストラゼネカで

     英製薬大手アストラゼネカの日本法人で初めて集団的労使関係が確立された。東京管理職ユニオン(全国ユニオン)に加入し、退職勧奨や懲戒解雇、降格減給などを争っていた原告らがこのほど、同社と和解し、労働協約を結んだ。処遇などに関わる問題は今後労使交渉で決めていく。6月23日に開いた大会では、名称を同ユニオン支部から「アストラゼネカ従業員労働組合」に改めた。今後は過半数組合をめざす。

     東京管理職ユニオンによると、同社は2014年に全国で50人の所長に指名退職勧奨を始めた。そのうちの一人がユニオンの支援を受けて勝利和解。その後加入者が続き、懲戒解雇、「業績改善プログラム(PIP)」と呼ばれる手法による降格減給、追い出し部屋への配転を強いられた組合員らが労働委員会や裁判での闘いを繰り広げた。

     昨年秋、懲戒解雇事件で解雇無効の判決が東京地裁で示され、高裁でも原告側に有利な状況であることが明らかになったころから、会社主導で事態が動き始めたと、原告側弁護団の棗一郎弁護士は振り返る。今年1月以降、包括的な解決を見据えた交渉を開始。5月、「将来に向かって正常な労使関係を築くこと」を確認する和解協定に双方が調印した。

     大会後の会見で、同ユニオンの鈴木剛委員長は「一人も脱落しなかった。最大のポイントは労働協約の締結。解決の水準も画期的なものだ」と語った。

     裁判で元の格付けに戻った原告の男性は「まさか自分の人生で裁判をするなんて思わなかった。おかしいことはおかしいと主張し、皆さんの支援を受けながら闘ってよかった。これを区切りに働きやすい職場にしていきたい」と喜びを表していた。

     

    ●1千万連合の一翼を

     

     組合員は現在約70人。職場での組合員拡大が今後の課題だ。上部団体である東京管理職ユニオンの鈴木委員長は「人事評価システムの改善やベースアップ、年休、労働時間、育児・介護など従業員全体の処遇改善に(運動の)かじを切る。連合傘下の製薬関連労組と情報の共有をしながら労働条件の向上を図り、『1千万連合』実現の一翼を担いたい」。

     医療情報提供者(MR)の早期退職募集が業界で増えていることを問われ、「労組のミッションはまずは雇用を守ること。財務状況を開示させ、必要な経営努力をまず求めていく」と語った。

     

    〈写真〉大会後のレセプションには、連合の総合組織局長と会社側代理人もメッセージを寄せ、UAゼンセンの製造部門担当者が激励に駆けつけた(6月23日、都内で)