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    インタビュー/「高プロ制使わせない運動を」/棗一郎日本労働弁護団幹事長

     労働時間の規制を外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制)を含む「働き方」関連法が6月29日に成立した。高プロ制を導入させないため、労働者や労働組合はどう備えればいいのか。日本労働弁護団の棗一郎幹事長に聞いた。

     ――長時間労働や過労死の危険が払拭(ふっしょく)されないまま法律が成立してしまいました 

     「成果で評価する制度」「労働者のニーズに基づいている」など、高プロ制に対する政府の説明がでっち上げだったことは国会質疑の中で明らかになった。今後も広く高プロ制の危険や欠陥を告発していく必要がある。

     採決にあたり47もの付帯決議がついた。法案の欠陥が多いということを示している。これは2016年の派遣法改正と同じだ。付帯決議に書かれた内容は法律の条文に書かれていない限り、法的な効力を持つことはなく、企業側を拘束することはできない。次の法改正の足掛かりになることはあるが、「ないよりはまし」といった程度のもの。労災認定を争う裁判などでは役に立たない。

     ――今後、どんな運動が必要ですか?

     運動としてはまず、高プロ制を使わせないようにする取り組みが必要だ。省令などを審議する労働政策審議会では高プロ制をなるべく使いづらい制度にする内容を省令に盛り込んでいくよう働きかける。年収要件や専門業務など、対象を広げさせないよう具体的な範囲を省令に書き込むことが重要だ。

     関連法として束ねられたパートタイム労働法の改正については、国会で議論を詰められなかった。これについても労政審で同一労働同一賃金を実現するための議論を促していく。

     ――労働組合の役割は?

     高プロ制を企業に導入させないため、高プロ制対応マニュアルを労働弁護団で作成する予定だ。まずは労働組合の側が高プロ制を導入させないよう、マニュアルをもとに労使間の取り決めを行ってほしい。喫緊の課題だ。

     今回、裁量労働制の対象範囲拡大は見送られたが、経団連はすでに拡大を図る法案提出を求めている。安倍総裁が3選されれば、裁量労働制の拡大は狙われ続ける。来年の国会を待たず、臨時国会で再び提出される可能性もある。今から反対運動を準備する必要がある。労働運動の力量が問われる場面がすぐに来る。