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    時の問題/「精神科医に銃持たせて」が波紋/差別助長する協会幹部意見

     日本精神科病院協会の山崎学会長が、協会機関誌で「精神科医にも拳銃を持たせてくれ」という別の医師の意見を「興味深い」と記し、波紋を広げています。

     問題の文章は、協会機関誌の「協会雑誌」5月号の巻頭言で、山崎会長の病院の部下である医師の発言を引用したもの。医師は米国の病院では民間会社の警備員が患者を拘束したり、銃で武装したりしている事例を挙げ「患者の暴力は治療問題ではなく治安問題」「欧米の患者はテロ実行犯と同等に扱われるようになってきています」などと指摘。「僕の意見は『精神科医にも拳銃を持たせてくれ』ということですが、院長先生、ご賛同いただけますか」という言葉で結んでいます。

     協会は患者団体などの抗議を受けて「患者への暴力を容認するものではない」と弁明。ホームページ上の文章を削除しましたが、会長の正式コメントはなされていません。

     

    ●人員配置の改善を

     

     巻頭言にある「欧米の患者はテロ実行犯と同等に扱われる」という内容は事実でしょうか?

     例えば、イタリアでは精神科病院の廃止を決めた180号法(別名バザーリア法)が1978年に成立し、その後20年以上かけて精神障害を持つ人が地域で生活できる仕組みを作り上げてきました。欧米で人権侵害を容認する精神科医療が行われてきたとする見方は、一部を切り取った極端な意見と言えます。

     医療関係者らでつくる日本医労連は「精神疾患の患者が危険な存在であるという差別・偏見が助長される」と機関誌の巻頭言を批判する声明を発表。医療従事者の安全確保対策として、他の科より少ない精神科の人員配置引き上げなどを求めています。