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    視聴者の信頼に応える放送へ/民放労連大会/土屋義嗣新委員長を選出

     放送関連産業の労組でつくる民放労連(全労連にオブ加盟)は7月28、29の両日、仙台市内で定期大会を開き、「視聴者の信頼に応える放送をめざす」ことなどを柱とする運動方針を確認した。長時間労働の是正をはじめ、放送局内で働く関連会社の労働者の処遇改善などについて各単組の取り組みが報告された。

     赤塚オホロ委員長の退任に伴い、新委員長に土屋義嗣氏(テレビ神奈川労組)を選出。斎田公生書記長を再任した。

     安倍政権は今年の規制改革推進会議で、番組の政治的公平を定めた放送法4条の撤廃や、インターネット番組の参入を打ち出す「放送制度改革」を模索した。日本民間放送連盟(民放連)やキー局が懸念を表明し、民放労連も反対を訴える中、4条の撤廃は見送られたが、問題は尾を引くとみられている。

     赤塚委員長は「放送の社会的価値が顧みられていない。今後も同会議の動きを注視する必要がある」と指摘。メディア総合研究所所長の砂川浩慶立教大学教授は、沖縄の米軍基地建設反対運動について事実に反する報道をした東京MXテレビ「ニュース女子」問題(放送倫理・番組向上機構が昨年、放送倫理違反を指摘)に触れ、「ネット上のデマが地上波に流れたということ。デマとかヘイトではなく、裏付けのある情報を報じる放送の意義について、民放労連や地連が議論を起こしていくべきではないか」と提案した。

     討論では、「放送規制改革に対し、民放連とも合同で(意見などを)出せないか」(日本テレビ労組)との意見や、ネットとの融合で信頼性の乏しい情報が発信されることへの懸念が語られた。

     

    ●許されない人権侵害

     

     1月の臨時大会以降、過労死や、財務事務次官による女性記者へのセクハラ問題で民放業界は揺れた。赤塚委員長は長時間労働問題に関連し「高度プロフェッショナル制度を職場に入れさせない取り組み」を提起。「(過酷な長時間労働で)内定者に逃げられ、入社後も辞められる。増員を求め、ゆとりある職場を」と呼びかけた。セクハラについては「許すことができない人権侵害」であり、「放送の将来がかかった重要な問題だ」として、業界の悪弊一掃を求める必要があると強調した。

     テレビ朝日労組は、セクハラがなくならない背景に管理職の時代錯誤の認識があるとし、ハラスメントや働き方改革のセミナー開催を求めていると報告した。

     

    ●派遣先労組は役割発揮を

     

     放送局内で働く派遣労働者について、派遣期間の上限を一律3年とする改正派遣法の節目が9月末に訪れるのを前に、派遣先労組として同法に基づき「意見表明」を行い、派遣先での直接雇用や、派遣元での無期雇用を求めるよう民放労連は呼びかけている。

     読売テレビ労組の代議員は、派遣労働者の直接雇用を自社に要請したことを報告、産別全体で取り組むよう代議員らに呼びかけた。京都放送労組は派遣労働者を直接雇用につなげた成果を報告し、「派遣労働者の地位向上は直用化にある」と強調した。

     大阪の朝日放送でニュース原稿作成に従事していた派遣労働者5人が一方的な契約打ち切りに対し、同社との交渉を求めて結成した朝日放送ラジオスタッフユニオンと、大分放送の関連会社の労働者18人で結成したOBSメディアワークス労組の加盟が承認された。

     

    〈写真〉「今、民主主義の危機を迎えている。メディアで働く者がきちんと警鐘を鳴らしていかなければならない」と強調した民放労連大会(7月29日、仙台市)