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    本人と遺族からの申請認める/総務省が改善通知/非正規職員の公務災害補償

     自治体で働く臨時・非常勤職員が仕事でけがをしたり病気になったりした場合、職員本人や家族(遺族)に公務災害補償を申請する権利が十分に認められていない問題が是正に向けて動き出した。総務省が7月20日付けで従来の措置を改善する通知を各自治体に出した。

     職員本人らが申請できるかどうかは、自治体が定める条例・規則次第。東京都と京都府が条例で認めているほか、施行規則や運用で申請可能としている自治体も少なくない。この問題を調べた官製ワーキングプア研究会は「主要自治体の約16%は本人らの請求を全く認めていない」と指摘している。

     

    ●規則案モデルを改正

     

     自治体が本人らの請求に消極的なのは、総務省が示している規則案モデル(ひな型)を参考にしているため。規則案モデルは、公務による死傷者が発生した場合は(本人や家族ではなく)当該職員の上司らが報告・申請することとしている。実際、北九州市で上司によるパワハラで過労自死に追い込まれた非常勤職員の母親が公務災害補償を申請したところ、市側は「規定がないから」と、申請自体を拒否する事態が起きている。パワハラをした当事者の上司が申請するはずもなく、このままでは遺族は泣き寝入りせざるを得ない状況に追い込まれていた。

     今春以降、北九州市の事例や、官製ワーキングプア研究会の調査結果がメディアで報道され、社会問題化しつつある中で、今回の総務省通知となった。総務省は規則案モデルに、本人や遺族からの申請を認めるとの規定を追加した。

     総務省は通知の中で、今回の改正内容を参考に各自治体で速やかに規則改正など所要の措置を講じるよう求めている。