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    インタビュー/節目迎える日本コンベヤ争議/JAM大阪・佐村書記長

     日本コンベヤ労組のTCSとの闘いは間もなく大きな節目を迎える。争議の現状などについて、JAM大阪の佐村達生書記長に聞いた。

     ――職場の現状は?

     佐村書記長 会社の業績は良好だ。手持ち資金が多く、TCSはそれを狙って買収したのだろう。日本コンベヤの資産を使って、日本で最も高額な部類の弁護士に依頼し、いたずらに争議を長引かせている。

     組合は踏みこたえているが、その一方で、社員がどんどん辞めていっている。約200人いる会社で、管理職を含め40人ほどが去って行った。TCSは全く意に介さない。

     日本コンベヤは専業では最大手で、競合他社は大手ゼネコンぐらい。「中小企業だけど大きな仕事ができる」ということに魅力を感じて入社した社員も多く、彼らは皆、高学歴で優秀だ。プロジェクトマネジャーを担える力も持っている。それが一時金をまともに出さない、組合つぶしもやめないでは嫌気がさす。大手ゼネコンからのヘッドハンティングがすごいと聞く。

     ――経営への影響は?

     新規の受注を断っている状況だ。ものすごく短納期の業界で、契約を結ぶ前から、受注を見込んでコンベヤーの装置を造り始めなければならない。特に最近の大手の若い発注担当者は、まるでアマゾンで注文するかのように「じゃ明日納入してもらえますか」と言ってくる。「いやいや、これから造るんですわ」と説明してやっと理解してもらえるという。そういう業界で、さらに組合つぶしが続き人が辞めていく状況では、受注しても仕事をこなしきれない。こなせなければペナルティー(違約金)が生じてしまう。絶好のビジネスチャンスをつぶされている。

     特に一時金が支給されないのがネックだ。TCSが組合を消耗させるために用いるお決まりの手口。組合員は皆仕事が好きで、仕事に打ち込みたいのに、一時金は0・4カ月とかよくて1カ月。昨年はゼロだった。そうなると無理して頑張って仕事をする意味がない。残業して遅くに家に帰ったら妻に怒られると言うのですね。「以前より年収が激減したのに、なんで一生懸命やるのか」と。

     ――TCSは何をしたいのか

     物づくりがまるで分かっていない。今年亡くなった創業者会長は「誰でもできる仕事」だとか、「百円ショップでも利益が出ている」などと訓話を垂れていた。そんなわけがない。1年や2年で一人前になれる仕事ではない。

     組合を消耗させ、あわよくば組織内で内乱や分裂を起こし、会社の資産を思い通りにしたいのだろう。

     現場では小競り合いが絶えない。「組合事務所を貸さない」と言ってみたり、人事異動や、諸手当の改廃など、次から次に新しい事態が起こる。職場オルグに一回行っただけでは変化について行けない。常にオルグを張り付けておかないと、新しい事態に対応できないという状況だ。

     ――年内に救済命令が出される

     9月半ばには団体交渉を求め、誠実協議や、労働協約破棄の全面撤回などを申し入れた。救済命令のタイミングに合わせて、職場での取り組みを強めたい。

     経営側にも生え抜きの役員、管理職をはじめ、なんとかしなければならないと考えている人がいる。「会社より一日でも長く闘って勝つ」という構えでJAM大阪を挙げて支援していく。

     

    〈写真〉神津連合会長が激励に駆け付けた決起集会。職場を守る闘いは正念場を迎える(2017年1月、都内)