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    インタビュー/組合の「見える化」が大事/柳恵美子・生協労連委員長

     9月の大会で委員長に選出された柳恵美子さん(56)。生協労連は非正規労働者の雇用確保と待遇改善を訴え、2年連続で組合員の純増を果たしている。当面する課題と抱負を聞いた。

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     ――パート労働者の無期転換は、今年4月以前から取り組んでいたとか。

     柳 改正労働契約法の施行(2013年)前から法を先取りしようと取り組んだ。今は人手不足が深刻。経営側に対しては「ずっと働いてほしいなら無期雇用ですよね」と迫り、各単組で実現してきた。

     ――無期雇用になった労働者の反応は?

     柳 雇用が続くことで自動車のローンが組め、財形貯蓄も可能になった。最近では労金がパート・アルバイト向けの商品を開発していて、組織拡大に活用させてもらっている。

     なにより、無期雇用になって人格を認められたという実感が大きい。もう、いつ雇用を切ってもいい存在ではない、ずっと働けるんだという安心感も得られた。「どうせパートなんだし」という意識も変わり、仕事への意欲が違ってきたと感じる。

     

    ●小さな要求の実現も

     

     ――組合員が純増になった。秘訣(ひけつ)は?

     柳 職場で組合の「見える化」を呼びかけている。わいわいと楽しそうにやっている姿を見てもらうこと。ちっちゃなことでも要求して改善を勝ち取ることかな。休憩室のテレビや給湯器が壊れたとき、組合が要求してすぐに直してもらったとか。そういうことの見える化が大事。職場環境の改善では、労働安全活動とセットで進めると効果的だと分かった。産業医が「改善すべき」と言えば、要求は通りやすいでしょう。

     今は、生協が委託している配送会社での組合づくりと処遇改善を重視している。人手不足もあり、働く状況は過酷。労働者からは「風邪をひいても休めない」「これ以上辞める人を増やしたくない」との声が上がっている。

     

    ●270万円政策実現へ

     

     ――生協労連が最賃闘争に取り組むわけは?

     柳 私が仕事を始めた約30年前、東京の最賃は500円程度。当時の時給は700円だったから、正直いって最賃を意識したことはなかった。でも今は違う。地域の賃金が低いままだと、生協の賃金も上がらない。全体として底上げする必要がある。都道府県どこでも同じ価格のものを売り、同じ仕事をしているのに地域間格差が大きいのもおかしい。全国一律制が必要だ。

     ――大会では「270万円政策」の具体化が訴えられた。

     柳 誰もが普通に暮らせる社会をつくるのが目的。時給1500円の実現と社会福祉の充実をセットで追求していく。医療・介護制度の充実、高校までの教育費無償化、家賃の安い公営住宅の建設など。生協労連の外にも発信し、政治課題に押し上げたい。

     

    ●ユーミンが大好き

     

     ――労働運動全体に訴えたいことは?

     柳 当事者を前面に出した活動を望みたい。非正規労働者が自ら立ち上がる仕組みをつくり、地域で一緒に運動できたらいい。

     ――先日の50周年パーティーで歌ってましたね。

     柳 にわか作りのロックバンドでユーミン(松任谷由実)を歌った。昔からユーミン一筋。中高生時代はピアノの弾き語りをしていて、一時は音楽大学に進もうかと思ったくらい。山登りも好きですよ。