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    給特法改正求め署名提出/教員の働き方/研究者と現職教員が会見

     公立学校の教員や過労死の遺族、教育研究者らが12月4日、教育現場の長時間労働の温床と批判されている給特法の抜本改正を求めるネット署名約3万3千筆を文部科学省と厚生労働省に提出した。文科省の学校における働き方改革特別部会は近く、1年単位の変形労働時間制の導入を含む答申をまとめる予定。

     給特法は(1)生徒の実習(2)学校行事(3)職員会議(4)緊急事態――以外の時間外労働を認めず、賃金の4%分の調整給を支払う仕組みだ。授業準備や保護者対応などによる残業は自発的行為とみなされ、超勤手当が支払われない。長時間労働を助長し、過労死を招いても、労働時間として扱われずに公務災害が認定されないなど、問題視されている。

     署名を呼びかけた高校教員の斉藤ひでみさん(仮名)は「教員1年目から過労で倒れる同僚や先輩を目の当たりにしてきた。自分は工夫しているが、多くの先生方を助けたい」と語った。

     文科省が教員の業務軽減を目的に配置する部活指導員やカウンセラーなどの予算要求を行ったことについて、「給特法がある以上、教員を使えば(残業代)ゼロ円で済む」とし、抜本的な改善にならないと批判した。

     「学校の働き方を考える教育学者の会」呼びかけ人の広田照幸日本大学教授は「文科省の中央教育審議会では、給特法の延長線上で議論をしているため、改正は期待できない。指針を示しても効果がない」と語気を強めた。

     

    ●変形労働制見送りを

     

     文科省が目指す公立学校教員への1年単位の変形労働時間制の導入についても反対を表明した。神奈川過労死等を考える家族の会代表の工藤祥子さんは、教員の脳・心臓疾患による過労死事案では、年間17件のうち7件が夏休み前の6~7月に亡くなっていると指摘。「教員だった夫も6月に亡くなった。8月に休めばいいという論理は成り立たない。(1年変形制が導入されれば)過労死を促進してしまう」と訴えた。

     内田良名古屋大学大学院准教授は、名古屋市の教員の勤務実態調査では8月も残業していると指摘し、夏休みの勤務時間を短くする案に疑問を呈した。「教員は教育者である前に労働者だ」と述べ、労働者保護の観点で厚労省は学校現場に対応してほしいと呼びかけた。

     

    〈写真〉変形労働時間制導入の問題点を解説する内田准教授(右)と広田教授