「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    19年は3500円以上を基本/基幹労連の春闘要求案/65歳現役社会へ足がかりを

     鉄鋼、造船重機、非鉄金属の労組でつくる基幹労連は12月6日、滋賀県内で春季闘争の討論集会を開き、基本構想を提案した。2年サイクルの個別年度(中間年)に当たる2019年は格差是正と一時金に重点を置くが、18年に1年分の賃上げを要求した組合については「3500円以上」の賃金改善を提起した。「65歳現役社会」の制度整備への足がかりを築くよう呼びかけている。

     18年度は鉄鋼が複数年度(2年で各3500円)を要求し、大手を中心に2年分の各1500円の回答を獲得、造船重機、非鉄は1年分を求め、1500円を獲得していた。

     19年度について、方針大綱は「3500円以上を基本とし、部門・部会でまとまりをもって取り組む」と提起。18年に「継続協議」とした中小組合への支援を行う。一時金は「年間5カ月分以上を基本」。

     21年度に60歳となる人から年金支給開始年齢が65歳に引き上げられることを見据え、定年延長など「65歳現役社会」の制度整備も焦点となる。18春闘の交渉では労使検討会の設置を呼びかけ、60歳以前の賃金原資を使うことなく「一貫した雇用形態」とするよう提起していた。

     神田健一委員長はあいさつで、「高技能、長期蓄積型産業である基幹労連の各企業では、優秀な人材の確保・定着の下で、技術・技能の伝承を図ることが、持続可能な企業運営にとっても重要。女性や高齢者の活躍が欠かせない」と述べ、制度づくりの取り組みを呼びかけた。

     

    ●深刻な人手不足

     

     分散会では、企業業績がおおむね堅調であるとともに、職場の現状について「職場は若く設備は古い。フル生産しながらの技術伝承は大変」(鉄鋼)、「人材不足で技術が低下し安全面でも影響が出ている。外国人技能実習生を雇わざるを得ない」(造船)、「今の若い人は交代制勤務を嫌う。派遣で補っても定着せず、すぐに辞めていく」(非鉄)、「入ってきた人数だけ翌月辞めていく。若者の定着にはワーク・ライフ・バランスを高める必要がある」(鉄鋼関連)など、人手不足の厳しい現状が報告された。

     関連企業労組支援の取り組みで、総合重工の組合が報告した。春闘期に関連労組を集めた研修会を開催。グループ各社の労働条件を示す一覧表を毎年作成して格差の「見える化」を図るとともに、グループ労連の会長、事務局長と関連労組委員長が一緒に経営幹部を訪れ、要請や要求の説明を行っているという。

     この組合は来春から65歳定年への移行を検討していることも報告した。役職定年の延長を行わないことや、60歳以前の賃金原資を使わないとの考え方を確認したうえで、賃金カーブのゆがみなどを点検することになるとの見通しも語った。

     別の総合重工の組合は、現政権の成長戦略の司令塔である「未来投資会議」が70歳への定年延長の検討を打ち出したことで、経営側から「65歳定年で制度を組んでも、すぐに変更しなければならなくなる。70歳定年の動向を見なければならない」と、制度整備の議論を先送りされたことに不満をもらした。

     鉄鋼関連の組合は、職場アンケートで、定年後再雇用者の賃金が定年時の6割に減少することへの不満が強く示されたことから、春闘で獲得した賃上げ原資の一部を再雇用者に配分していると報告した。その上で「新しい制度をどう整備するか、経営側は総合(大手)組合の動向をよくみている。迅速な情報発信を」と要請した。

     方針は年明けの中央委員会で正式に決定する。