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    求められる外国人労働者支援/改正入管法が成立

     外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案が12月8日未明、自民、公明、維新などの賛成多数で可決成立した。人権侵害が横行する劣悪な働かせ方は、人道上問題があるばかりでなく、ひいては国内の労働条件を悪化させることになりかねない。労働運動の監視と支援が必要だ。

     政府は来年4月施行に向け、受け入れの基本方針を策定する。受け入れ業種や人数、賃金のほか、悪質ブローカーの排除などを検討するという。制度の根幹に関わるこれらの仕組みは本来、国会で話し合って決めるのが本筋だ。しかし、政府は終始明らかにせず、法改正後の行政手続きに委ねた。国会軽視、国民軽視が目に余ると言わざるを得ない。「一連の国会審議は低調」(12月9日、「読売」社説)というが、その責任は政府・与党が問われなければならないだろう。

     唯一の収穫は、外国人技能実習生の劣悪な実態が明るみになったこと。3年間で69人も死亡している実態や、年間7千人もの失踪、その大半が最低賃金割れだったことが、野党の努力で白日の下にさらされた。しかし、政府は「別の制度」との一点張りで逃げ切りを図った。

     今回創設された新たな在留資格は、多くが技能実習からの移行が予定されている。技能実習制度と同じ劣悪な働かせ方にならない保障は何もない。

     国内で働く外国人労働者は128万人。既に移民大国だとも指摘される。格安な労働力ではなく、「人」として受け入れることが国内労働市場を劣化させないためにも欠かせない。技能実習制度の抜本的な改善と併せて、「改正」法の動向を注視する必要がある。

     

    ●問われる発注元の責任

     

     法案審議のさなか、注目すべき労組の取り組みが報じられた。

     衣料品大手の「しまむら」が全ての取引先企業に対し、外国人技能実習生への人権侵害がないよう通知した。同社の下請けで働いていたミャンマー人実習生を保護したJAMの要請に基づく対応。下請けの労働環境改善は発注元企業がその鍵を握る。こうしたサプライチェーン(供給網)全体を視野に入れた取り組みが求められる。

     山口では、スクラムユニオンひろしまが、日立を解雇されたフィリピン人技能実習生200人を組織し、団体交渉の末、11月に残りの実習期間(1~2年分)の賃金を補償させた。

     シャープ亀山工場では約3千人の日系人が雇い止めにされ、ユニオンみえ(全国ユニオン)が同社の責任を問うている。反社会的勢力が「派遣会社」を装い、労働者供給などの職業安定法違反を繰り返していた。

     「改正」法の動向を注視するとともに、受け入れ国側の労組の取り組みが求められる。