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    住居手当などで1審上回る/東京高裁判決/日本郵便相手の格差是正裁判

     日本郵便で働く契約社員が、同じ業務の正社員との手当や賞与の格差は労働契約法20条に違反すると訴えていた裁判の控訴審で、東京高等裁判所は12月13日、判決を言い渡した。1審で減額されていた年末年始手当と住居手当の損害賠償を全額認めるなど約170万円の支払いを命じた。夏期年末手当(賞与)の格差是正をはじめ、その他の訴えは退けた。原告らは最高裁へ上告する予定だ。

     1審の東京地裁は、年末年始手当と住居手当の不支給を不合理とし、それぞれ8割と6割の損害賠償を認めていた。

     2審の東京高裁では、住居手当の趣旨が住宅費用の補助であり、比較対象の正社員は転居を伴う配置転換の予定がなく、契約社員も住宅に要する程度は同じと判断した。その上で、1審で割合支給の理由付けとなった「長期雇用者へのインセンティブ」「有為な人材確保」との経営側の主張は採用しなかった。

     夏期冬期休暇と有給の病気休暇について、1審は不支給を不合理と判断していた(損害賠償は請求せず)。2審では実際に病気で休まざるをえなかった分を病気休暇の損害賠償として認めた。

     弁護団の水口洋介弁護士は、二つの手当の損害賠償を全額認めたことを評価。有給の病気休暇についても「金額はわずかだが、時給制の契約社員に認めたのは評価すべき。日本郵便で働く19万人にとって大きな是正」と述べた。

     一方、正社員と4~5倍近い格差がある賞与について、東京高裁は「業績等を踏まえた労使交渉により支給内容が決定される」とし、不合理と評価しなかった。棗一郎弁護士は「労契法20条は、労使自治に委ねていては格差が縮まらないからとつくられたもの。ほとんど同じ仕事をしているのに(格差を容認するのは)おかしい。これで格差是正になるのか」と批判した。

     

    〈写真〉裁判所前に集まった支援者らに「前判決より前進」の旗を掲げる原告の浅川さん(右)と宇田川さん(12月13日、東京高等裁所前で)

     

    切実だった住居手当/原告の浅川喜義さん

     賃貸家賃の更新料を月給から積み立てられなければ、賞与から出すことになり、非正規にとって住居手当は切実だった。賞与はあるものの、同じ勤続年数の正社員との差はどんどん開いていく。司法は非正規の実態を理解していないと思う。同じサービスを提供するため、人手不足の中で非正規も一緒に働いている。この格差は許されるのか。(安倍首相の)非正規をなくすという言葉につながるのか。

     

    有給の病気休暇は当然/原告の宇田川朝史さん

     有給の病気休暇が認められたのは非常に大きい。無給の休暇を何日与えられても意味がない。非正規にとって悲願の一つだ。このために一念発起し、裁判を起こしたと言っても過言ではない。賞与については全く納得できない。正規と肩を並べて同じ仕事をしているのに、賞与や退職金を含めれば生涯の格差は何倍にもなる。日本の社会全体で考えるべきだ。

     

    格差是正に役立つ判決/郵政ユニオンの声明

     原告が加入する郵政産業労働者ユニオンと労契法20条格差是正訴訟原告弁護団は12月13日、東京高裁判決を受けて声明を発表し、東京地裁判決を前進させた内容だと評価した。

     有給の病気休暇の格差に損害賠償を認めた点では、労契法20条裁判の中で本判決が初とし「非正規労働者の労働条件格差を是正していくための前進といえる判決」と強調した。

     19万人もの非正規労働者が働く日本郵便を相手取った裁判での勝利判決について「非正規雇用の増大と格差が広がる我が国の雇用社会に与える影響力は大きい」と指摘。日本郵便に対し、判決を受け入れて格差是正のために団体交渉の席に着くよう求めた。