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    年収要件1075万円変えず/高プロ制の省令・指針案/不同意への不利益扱いは禁止

     一部専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制)の省令を検討する労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の労働条件分科会が12月14日に開かれ、厚労省が省令要綱案と指針案を示した。適用できる労働者の年収要件は1075万円のまま。高プロ制に同意しなかったことや同意を撤回したことに対して不利益扱いをしてはならないことを、あらかじめ本人に書面で明示することとしている。

     

    ●厚労省は聞く耳持たず

     

     労働側委員は「私たちのさまざまな意見が取り入れられた」と一定評価しつつも、年収要件を1075万円とすることには重ねて反対し、見直しを求めた。

     労働側委員はこれまでも、1075万円を算出した統計数値にパート労働者の年収が含まれており、不適切だと主張してきた。柴田謙司情報労連書記長は「真に交渉力のある労働者を高プロ制の対象にするなら、グローバルな視野で見るべき。IT関係のグローバル人材には年収2千~3千万円の報酬が出る時代だ」と指摘した。

     厚労省は「1075万円が過去の労政審で基準とされた数字」と、従来の説明を繰り返した。公益委員も「1075万円は妥当」と主張した。

     公益委員の川田琢之筑波大学ビジネスサイエンス系教授は「(高プロ制対象者には)休日確保措置と健康確保措置があり、制度の同意撤回も保証されている。高度専門職にふさわしい処遇になっている。年収1075万円は妥当」。守島基博学習院大学経済学部経営学科教授も「1075万円はあくまでも出発点で、現場の労使交渉で変更していくことが可能な仕組み。パートの年収が入っていても妥当ではないか」と発言した。