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    「労働者性あるのは明らか」/東京電力系の請負労働者/組合結成し都労委に申し立て

     東京電力の関連会社で電気メーターの交換工事を請け負って働いている人たちが昨年12月、労働組合を結成した。団体交渉を申し込んだところ、会社は「あなたたちは労働者ではない」と拒否したため、組合は東京都労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。契約上は請負だが、労働組合法上の労働者だという主張が認められるかどうかが焦点。安倍政権が労働法の適用を難しくする働かせ方を広げようとしているなか、行方が注目される。

     

    ●「雇い止め」撤回を

     

     この会社はワットラインサービス。東電ホールディングス傘下の東電パワーグリット社の孫会社だ。電気メーターをスマートメーターに取り替える工事を行っている。

     組合結成のきっかけは、二十数年の経験がある高野清さんへの契約解除(雇い止め)通知だった。作業ミスなどについて一方的に過大な罰則点を付けられ、契約を更新しないと告げられたのだ。高野さんと同僚が全労連・全国一般東京地方本部一般合同労組に相談し、計器工事関連分会を立ち上げた。

     組合は(1)高野さんの3月末雇い止めの撤回(2)一方的に定められた罰則規定の作り直し(3)工事単価の改善――などを求めている。

     

    ●最高裁判決に照らせば

     

     会社が団交を拒否したため、労働委員会では労働者性の有無が争点になる。

     この点で労働側の酒井健雄弁護士は「(今回のケースは)INAXメンテナンス事件の最高裁判決(2011年4月)などで示された労働者性の判断基準にドンピシャリ合っており、労働者性があることははっきりしている」と指摘する。

     INAXメンテナンス事件の判決やビクターサービスエンジニアリング事件の最高裁判決(12年2月)では(1)会社組織への組み込み(2)契約内容の一方的決定(3)報酬の労務対価性(4)業務の依頼に応ずべき関係(諾否の自由)(5)指揮監督下の労務提供・時間的場所的拘束――の5点を中心に労働者性を判断することとした。その際、契約書の形式や文言などにとらわれず、実態に即して判断すべきとした点が特徴とされている。

     高野さんらは、工事単価表による請負金を毎月25日に支払われており「労務に対する対価そのもの」と主張。割り当てられた工事を断ることは事実上困難で、工事の日時、場所、方法については会社の指揮下にあるという。労働三権が保障される労組法上の労働者であるという主張だ。

     組合は東京電力への働きかけを含め、今後、取り組みを強める意向だ。