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    〈働く・地方の現場から〉/宮古新報の灯を消すな/ジャーナリスト 東海林智

     昨年、「カメラを止めるな!」という手作り感満載のホラーコメディー映画が大きな話題を呼んだが、沖縄・宮古島では今、「輪転機を止めるな」と声に出したい事態が進んでいる。日刊地域紙「宮古新報」をめぐる問題だ。 

     

    ●労組が自主発行継続

     

     宮古新報労組(伊佐次郎委員長)は昨年11月、座喜味弘二社長によるパワハラやセクハラ行為があったとして、退陣を要求した。社長はパワハラ・セクハラを否定した上で、体調不良などを理由に退任と事業譲渡の意向を示していた。しかし、すんなり退かず、新聞の廃刊と会社清算を表明し、1月10日に全社員14人に解雇を通告したのだ。

     宮古新報は創刊51年の歴史を持つ。会社は業績不振で赤字というが、昨年まで黒字を続けてきた。単年度の赤字転落を理由に廃業するのか、会社は何の努力をしたのか。報道の社会的な役割をばかにしていると言わざるを得ない対応だ。

     乱暴な通告を受けた組合は、「廃業」の社告を11日付紙面に載せる作業を断固として拒否した。その後、労組は加盟する新聞労連や沖縄県マスコミ労働組合協議会(沖縄マスコミ労協)の支援を得て、11日以降、組合員だけで新聞発行を継続している。

     自主発行初日の12日付紙面から掲載しているコラム「社窓風景」。第1回は「11日、出勤時から社内はまさに緊迫した状況のなかで、社員たちは不安な気持ちを奮い立たせ、ひっきりなしに鳴り続ける電話……」と状況を描写する。自主発行の継続を知らせる記者会見を開きつつ、編集2人、制作2人、印刷2人、営業2人、事務1人で新聞製作に取りかかった。手探りの中で、新聞を発行し続ける労組の緊張と決意が伝わってくる。

     

    ●広がる支援の輪

     

     宮古島では新報労組が、東京では新聞労連が会見を開き、緊迫する事態と会社の不当性を訴え、全国的な反響を呼んだ。同時に一番身近なライバルでもある、同島のもう一つの地域紙「宮古毎日新聞」の労組によるきめ細かな支援が大きな支えになっている。

     宮毎労組と言えば、宮古島に民間初の労組を作り、会社の組合差別を許さず、闘い抜いてきたつわものだ。彼らの支援、そして全国の仲間が彼らを支えてきた歴史が、今回の闘いを支える大きな財産になっているのは間違いない。紙面の上ではライバルだが、多様な言論が地域に存在する意義は大きい。宮毎労組の仲間はフェイスブックで「こんな形でライバル紙がなくなるのは私たちとしても納得できません。ぜひ(この闘いに)注目して下さい」と呼びかけている。

     新聞は8ページが4ページになり、紙もいつまで(在庫が)持つか分からない、収入はどうなるのか……。不安は尽きない。それでも、「新聞続けます」「宮古の新聞を残そう」のビラを市民に配布した。沖縄本島から東京から次々と仲間が応援に駆け付けている。新聞労連が加盟の組合に呼びかけるカンパとは別に、広く市民に発行を支えるカンパを求める運動も広がっている。

     

    ●人生のオールは自分で

     

     理不尽な解雇に抗う様子は、中島みゆきの「宙船(そらふね)」を想起させる。当該の組合員にフェイスブックでそう伝えるとこんな返事がきた。

     「♪その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ おまえが消えて喜ぶ者におまえのオールをまかせるな……ですね。私は決して他人に自分の人生のオールを任せません」

     カンパ先は以下。ゆうちょ銀行店名〇一八(ゼロイチハチ)店番018 普通 8761741恵友会