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    残業の2千時間上限を批判/医師ユニオン/厚労省事務局案は違憲の恐れ

     厚生労働省内の「医師の働き方改革に関する検討会」は1月11日、医師の年間残業上限を1900~2千時間とする事務局案を示した。これは月160時間に相当し、過労死ライン(複数月平均80時間)の2倍。勤務医でつくる全国医師ユニオンは1月17日、事務局案について「憲法違反が危惧される」と厳しく批判する声明を発表した。

     

    ●憲法14条に違反

     

     声明は、日本国憲法が定める「法の下の平等」(第14条)に反する点をまず指摘した。政府の働き方改革では、一般労働者の時間外上限は休日を含め年960時間(複数月平均80時間)。医師にだけその2倍の約2千時間近い上限を適用するのは、職業差別であり憲法14条違反ではないかと批判した。

     

    ●憲法18条に違反

     

     第18条の「奴隷的拘束及び苦役からの自由」規定にも違反する恐れが強いという。「月160時間の残業を業務命令として強制することができるようになれば、現場の医師は意に反する苦役を強いられる可能性が高い」と指摘した。

     

    ●憲法25条に違反

     

     さらに「全ての国民に健康で文化的な最低限の生活を営む権利」を保障した第25条とは無縁の、過重労働が容認されるのは明らかだと訴えている。

     こうした違憲の恐れを指摘した上で、声明はこう強調した。

     「医師不足を引き起こしたのは厚労省の医師数抑制政策であり、その反省なくして、医師個人に責任を転嫁することなど言語道断である。憲法を無視した厚労省の暴挙が認められるようなことがあれば、労働基準法はますます形がい化し、医師と労働者の権利は脅かされる一方だろう」