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    〈年越し派遣村から10年〉下/当事者支える運動の再構築を/格差と貧困の課題は未解決

     反貧困ネットワーク全国集会では、年越し派遣村から10年が過ぎても貧困と格差の現状が大きく変わっていないと確認した上で、今後どうすべきかについて話し合った。

     

    ●「平時」に何をするか

     

     地方のネットワーク組織からは、公営住宅からの低所得者追い出しを阻止した活動や、生活保護に関する自治体のしおりの記述を修正させた経験、ホームレスのためのシェルターづくり、奨学金無償化を求める運動、子ども食堂の運営などの取り組みが報告された。

     とはいえ、ほぼ共通して指摘されたのが「活動資金とマンパワーの不足」。集会や行動に以前ほど人が集まらなくなり、苦労している実情を訴えた。

     自己責任論の強まりや「諦め感」の広がり、貧困の日常化が指摘されるなかで10年前のような、目に見える運動の盛り上がりはつくれていない。

     首都圏青年ユニオンの元書記長で、活動家の河添誠氏は「年越し派遣村は、リーマンショックで製造業派遣の労働者が大量に雇い止めされ路上に出てくるという非常時の取り組みだった。今は平時の運動をどうつくっていくかが課題だろう」と述べた。

     

    ●暮らしの成り立つ社会へ

     

     作家で活動家の雨宮処凛さんは「『アラフォー・単身・非正規』の女性が生きていけるモデルをつくっていくことが必要だ」と訴えた。連合の非正規センターで初代センター長を務めた龍井葉二氏は、労働運動と市民運動の連携に触れながら「地方に仕事があって、そこそこ暮らしていける社会をどう展望するか、そこを模索したい」と語った。

     派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は、ベテラン派遣労働者の雇い止めが相次ぐ現状を是正するには、あらためて派遣法の抜本改正が必要と強調。「無期雇用を前提とした労働者派遣制度へ見直しを」と訴えた。

     

    ●現場と当事者を大切に

     

     集会実行委員長の宇都宮健児弁護士は、社会保障や労働、税・財政などさまざまな分野の人々を横につなぐ必要性を強調しつつ、こう述べた。

     「私たちの運動の強みは、現場と当事者を中心にしている点にある。当事者自身が声を上げ、闘えるよう支援する運動を、もう一度つくり、それを広げる中で政治を変えていこう」

     

    〈写真〉「派遣村」関係者が当時を振り返り、今の課題について討論した(2月16日、都内)