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    低額だがベアは継続/金属大手など/3月13日の集中回答

     金属大手の回答が3月13日示された。賃金改善(ベア)は今年も継続。トヨタが昨年に続き、ベア分などの回答の詳細を非開示とする中、満額回答の日産、前年同額の造船・総合重工のほかは、おおむね昨年比微減となった。中堅・中小金属のJAM、内需関連のUAゼンセンは、大手が前年以上や同水準の回答を引き出すなど、後続の中小労組につなぐ相場形成の努力が今年も図られた。

     自動車は、満額の日産、非開示のトヨタとマツダのほか、メーカー組合は昨年比微減とはいえベアを引き出している。電機大手12組合は同500円減の千円でそろえた。JAMはコマツなど大手3組合が2千円以上を獲得。造船・総合重工4組合は、鉄鋼が19年分として昨年引き出した1500円を確保した。

     トヨタの一時金は年間ではなく、夏のみ120万円と、かつてない回答となっている。

     高倉明金属労協議長は、グローバル経済による下押しリスクが強調され、月例賃金の引き上げさえ困難だったと振り返り「ぎりぎりの交渉を行った結果。最大限の回答を引き出したものと判断する」と評価した。

     その上で「今後の中堅・中小が大手を上回る賃上げができるよう、金属労協全体で支援していく」と述べた。

     同日夜にはUAゼンセンが会見を開き、昨年並みのベア2千円前後を引き出した帝人や旭化成など、化学素材大手4組合の妥結額を公表。木暮弘書記長は「いかに下げ止めるかを意識した。電機大手の情報しかない中で、造船・総合重工の回答を事前につかみ、前年比マイナスだけではないことを先行組合に伝えた。前年割れの組合には再交渉をさせている。先行相場を後続グループにつなげたい」と語った。

    〈解説〉相場形成の努力こそ/トヨタ手法追随はわずか

     ベア非開示を容認する方針の下での集中回答。トヨタとその関連、マツダが追随したが、他はベア要求額を明らかにして取り組んだ。低額だがベアが継続され、一定の相場形成が図られた点は今後につながる。

     春闘は、多くの組合が一斉に賃上げを要求し、好調な組合が相場をつくることで、社会全体に賃上げを行き渡らせる仕組み。先行組合が情報を公開しないことには始まらない。

     トヨタが自らけん引役の座を降りる中、ほとんどの組合が春闘の統一闘争を踏まえ、今年もベア回答を引き出した。

     だが、その水準は低額だ。90年代後半以降に賃金水準は低下。毎年0・5%程度のベアで物価上昇分を確保できていない。内部留保は増え続け、労働分配率は低下する一方だ。

     下請けへの理不尽な値引き要請が強まっていることも指摘される。大手労組をはじめ、労働界全体の取り組みが求められる。

     大手を含めて賃上げ相場をつくり、賃上げできる環境整備を進める。中小はそれを踏み台にしながら、あるべき賃金水準を目指す――。格差是正、内需拡大による経済の好循環実現は、毎年のこの地道な取り組みの先にこそある。

     

    〈写真〉回答額をボードに書き込む金属労協のスタッフ(3月13日、都内)