「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    インタビュー/〈ILO100周年〉(3)/条約活用し長時間労働是正を/郷野晶子労働側理事に聞く

    (3)日本は労働時間条約(第1号)や週40時間条約(第47号)をはじめ、労働時間に関わる条約を批准していません。この問題をどう見ていますか?

     

     第1号条約で労働時間を取り上げたことでも分かる通り、ILOはもともと長時間労働規制への問題意識を強く持っていたということです。

     第1号条約は時間外労働を認めておらず、批准するにはハードルが高いのも事実。それに比べれば47号条約の批准はさほど難しいようには見えません。連合も批准すべき条約の優先リストに挙げています。

     これらの条約をなぜ批准できないのかについて、日本政府ははっきりした理由を明らかにしていません。ただ、変形労働時間制や36協定など、週40時間の例外を広範に認める労働基準法の規定がネックになっていると政府は考えているようです。

     条約で大事なのは、批准に向け法整備を含めて努力をしていく、その過程です。少しでも条約の内容に近づけていく運動が望まれます。

     

    ●年休消化を大前提に

     

     仕事と生活を両立させる上で、労働時間をどうするかは大切な問題です。

     個人的には、制度とメンタリティーを変える必要があると考えています。例えば、会社がシフトを組んで勤務体制をつくる場合、従業員全員の年休消化を前提としているでしょうか。そうはなっていないと思います。

     ヨーロッパでは全員が休めるようにローテーションを組むことが当然視されています。誰かが休暇取得など権利を行使したことによって自分が不便を強いられても我慢します。個人の権利行使におおらかだといえます。企業だけでなく、役所も同じです。

     彼ら彼女らは、遊ぶこと、家族とエンジョイすることのために働いています。日本はメンタリティーが逆。

     ここを変えていくことが必要でしょう。

     

    〈用語解説〉

     

     第1号条約 正式名は「工業的企業に於ける労働時間を1日8時間かつ1週48時間に制限する条約」で、1919年11月に採択されました。この規制には、団体協約で決めた場合や交代制労働の場合に例外が認められています。とはいえ、団体協約のケースでも1日の残業時間は1時間未満。交代制でも週当たり8時間未満であり、厳しい内容となっています。日本については第9条で例外規定(特殊国条項)が設けられ、週の最長労働時間を一般工業で57時間、生糸工業で60時間とすることを容認。日本政府は条約採択に賛成したものの、批准はせず。戦後も一貫して批准に背を向けています。

     第47号条約 正式名は「労働時間を1週40時間に短縮することに関する条約」で、1935年6月に採択(日本は未批准)。失業防止などを目指して週40時間制を打ち出し、各国に必要な措置を取るよう求めています。47号条約を補完する勧告116号(労働時間の短縮に関する勧告、1962年採択)では、労働時間短縮に際しての賃金減額を禁止。1週48時間以上のところは直ちに48時間への短縮措置を取るべきと定めました。