「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    人間らしく暮らす権利保障を/移住連が声明/外国人労働者の受け入れで

     移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は3月29日、入国管理法改正による新たな外国人労働者受け入れについて声明を発表した。外国にルーツのある人びとが、人間らしく暮らせる権利と尊厳の保障を訴えている。

     法改正では「特定技能」の在留資格が新設された。1号は外国人技能実習制度からの移行が可能で、在留期間は5年を上限とし、家族の帯同は認めない。介護や農業など14業種が対象だ。熟練した技能を要する2号は在留期間の更新が可能で、家族帯同も認められているが、現在は建設と造船・舶用工業の2業種に限られている。

     声明は特定技能の在留資格でも技能実習と同様の人権侵害が続くと警鐘を鳴らした(表)。

     声明を発表した記者会見で、外国人労働者弁護団の指宿昭一代表は受け入れを仲介するブローカーへの規制がないことについて「渡航前に労働者がブローカーに支払う費用は、自国の年収で3~4年分。渡航前費用の規制はなく、実費の何倍もの不当な金額だ。政府は外国人労働者を本気で保護するつもりはないのか」と厳しく批判。特定技能の受け入れを担う登録支援機関の委託料などに規制がないことも問題視した。

     法務省が同日発表した技能実習生の失踪に関する調査報告に触れ「労働法違反による失踪が疑われているのに、(背景にある)実態について(帰国した元実習生に)聴取していない。本気で調査しようとしなかった」と述べ、技能実習を直ちに廃止すべきと強調した。

     移住連の鳥井一平代表理事は「実習生の失踪率4%は低い。逃げる自由さえないのが問題だ」と指摘。各地で開かれた特定技能の説明会では、宗教や習慣の違いに配慮がないという。登録支援機関任せにすればブローカーによる搾取につながりかねないと予見した。

     「外国人労働者を使い捨ての労働力にしてはいけない」と強調し、外国人の人権や生活を軽視すれば、差別意識が助長され、ヘイトスピーチなど人権侵害が拡大すると懸念した。

     

    ●特定技能は除染作業も?

     

     会見では放射性物質の除染作業についても触れた。建設分野における特定技能の運用要領によると、除染業務を受け入れ対象外とする一方、例外として認めるような記述があるという。同じ会社で同じ業務の日本人従事者が除染作業を行っている場合は、同程度の範囲内で従事させることは差し支えないともとれる。

     全統一労働組合の佐々木史朗書記長は「事実上、除染作業をさせてよいと明記したようなもの。除染に関する特別教育には半日から1日かかり、テキストも膨大な量。(受け入れ条件とされた)N4レベルの日本語で理解できるのか」と疑念を強めた。