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    経営統合中の解雇、有効と判断/東京地裁/ユナイテッド航空事件

     コンチネンタルミクロネシア航空(当時、CMI)の元客室乗務員ら4人が解雇無効を訴えていた裁判で、東京地方裁判所(春名茂裁判長)は3月28日、経営上の合理性や解雇回避措置を認め、解雇を有効と判断し、訴えを退けた。CMIは2017年4月、ユナイテッド航空(UA)と合併したため、裁判はUAと争われている。経営統合時における雇用責任をどう判断するかが問われていた。

     CMIの親会社コンチネンタル航空が2010年に旧UAと合併し、経営統合の作業が進む中、CMIは2016年2月、グアム便を運航する成田ベースの閉鎖を通告。客室乗務員に対し、地上職への転換か退職(特別退職金支給)を提案した。グアムベースへの異動など、他の選択肢は示されず、応じなかった乗務員は5月に解雇された。

     その一方で、旧UAの乗務員が加入する労組(AFA)は独自の協約の締結に向けた協議を進めていたとみられる。そこには「AFAに所属しない米国籍以外の客室乗務員の乗務は認めない」という文言があった。事実、グアムベース在籍のAFA組合員は雇用が保障され、CMIの日本人乗務員は解雇されている。

     判決は、合併した3社で就業規則や労働契約が異なることを理由に、CMI単体で解雇要件を満たしているかを検討した。成田ベース所属の乗務員は搭乗時間が短く、乗客増も見込めないため、高コストの要因だとする会社側の主張を採用し、人員削減の必要性を認めた。解雇後、UAが成田ベースの人件費3倍相当の昇給を行ったことなどから、原告は「人員削減は不要だった」と主張したが、解雇時点でUAとCMIの合併は未確定だったなどとして退けた。

     判決は、地上職への配置転換や特別退職金の支給(20カ月分)について「相当に手厚い解雇回避努力」と評価。グアムベースに転勤する可能性については、米国と就労ビザ制度が異なり、費用面からも現実的ではないと判断した。

     

    ●米国労組と差別

     

     原告代理人の荒木昭彦弁護士は「一番強く主張したAFAとの組合差別について判決は、労働協約の締結が解雇後で無関係というが、形式的な判断で承服できない」と述べた。

     原告らは勤続20年以上のベテラン乗務員だ。CMIが1998年に行った上限5年の契約社員への変更と人員削減がきっかけで組合(全国一般・全労働者組合の分会)を結成。職場復帰を勝ち取っている。原告の一人、千田正信さんは「会社側の主張が通った不当判決だ。数千人単位で求人募集し、時給を上げ、利益を上げている中での解雇は(整理解雇要件から)逸脱している。差別行為は許されない」と批判し、原職復帰まで闘うと述べた。